好きって、言って欲しかった

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昔の話をしよう


あの人に恋をした話を




昔の私はマフィアの下っ端で、仕事内容も事務仕事などが多かった

ある日、ある構成員の報告書を偶々任され、其れを自分のデスクでこなしていた

容姿の所為でもあるが、と云うか殆ど容姿の所為だが、私は他人に仕事を押し付けられる事が多かった

カタカタとパソコンのキーボードを叩いて居ると、いつの間にか、あの人が私の目の前に座っていたのだ


初めは全く気が付かなかった


報告書がひと段落ついた所で、息を吸い、前を見ると、其処にはあの、愛しい人が居たのだ


とても驚いた


話した事など一度も無く、増してや途轍も無い強さを持った双黒の一人

恐れ多く、そして恥ずかしさで、私は一度も声を掛けた事が無かった


「やぁ、こんにちは」

彼の人はそう云った
とても美しい笑顔で

「こ、、こんにちは」

私の声は緊張と焦りで掠れた酷い声だった



「大変だね、仕事」

「い、いえ、私は此れしか出来ないので」

「そっか、、、」

「は、い」


初めて彼の人と会話をした
夢の様だった

心臓がばくばくと煩くなって居て、顔もとても熱かった


「頑張ってね、仕事」


彼は微笑んでそう言った

初めてだった
頑張ってね、なんて言われたの
私に微笑んでくれたの


普通の女の子と変わらない扱いを、初めて受けた


でも、自惚れちゃいけない
私は醜い、汚いから………

この心は、諦めよう
一日限りの、素敵な思い出だった

それだけ、たったそれだけだ




その夜は、彼の人を思って一人で泣いた

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