神と会う ページ2
次にAが目を覚ましたのは本がたくさんある部屋だった。
なんとなく書斎のような雰囲気がする部屋に和音がぽつんと立っていた。コーヒーのいい香りがAの鼻をくすぐる。
「どこ、ここ……。えっ!? いや本当にどこ!?」
困惑した声の次に焦ったような声を出し、Aはコロコロとその表情を変える。妙に落ち着くその場所だったが、『見覚えのない場所にいる』という事実がAを現実に引き戻し、そして不安な気持ちを駆り立てていた。
こつ、こつと足音がこちらへ向かってくる。開いた扉の向こうにいたのは清潔そうな男。シワ一つないシンプルな白いシャツに、黒いズボンを穿いていた。
現れた男の表情はどこか困っているように見えた。困っているのはこっちだと思いながらもAは一歩後ずさる。それもそのはずだろう。目の前の男がAを攫った犯人かもしれないのだから。
「そんなに警戒しないでほしい……というのは無理なお願いか。すまない。君をここに呼んだのは私だ」
「やっぱり――え? 呼んだ?」
攫った、ではなく? Aは眉を顰め、男の次の言葉を待った。男は短く息を吐いてから真っ直ぐAのを目を見た。
「勝手な申し出とは重々承知している。それでも私の話を聞いてほしい」
突然Aの目の前に現れた"異常な非日常"。
Aは目線と首を僅かに動かして男に続きを話すよう促した。
「ありがとう。まずは私の説明から。私は君たちが神というものの一人だ。そしてこの空間は君のイメージを具現化した空間だ」
「……あー……え? かみ、さま?」
早速意味不明な説明が来たことにAはぽかんとする。
すると男はすまないと一言謝ってから事細かに説明し始める。
先ほど男が言ったように、男は俗にいう「神」という存在らしい。
何か証拠はあるのかというAの問いに対して男はパチンと指を鳴らす。
するとAの横にあったローテーブルの上に二人分のコーヒーと恐らく茶請けであろうクッキーが突然出現する。手品なんてちゃちなものではないことを瞬時にAは理解した。
「これから私が君に話す内容は数分では話しきれない。座って話そう」
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作者名:うがつ | 作成日時:2022年9月18日 16時