七十八 ページ44
とりあえず、宇髄のお嫁さんと合流しなくちゃいけない。
迷子になったフリをして京極屋をうろうろと動き回り、情報を集めつつ此処にいるはずの雛鶴さんとの接触を図る。
宇髄の妻の一人である雛鶴さんはクノイチだ。
この京極屋で花魁となることができたそうだが、どうやら数日前から体調が優れず床に臥せているらしい。
ということは、何処かの部屋で寝ているのだろうか。
体調が優れないは表向きの理由だろう。
動けなくなった本当の理由がある筈だ。
それは、鬼の仕業か否か。
考え事をしながら暫く廊下を突き進んでいた。段々と人気が少なくなっている。
何やら狭い通路に入った途端、ふと気配がした。
背後に誰か………何か、禍々しい者がいる。
誰だ？人間か？人間にしては…………
｢その先に何か用？｣
後ろを振り返るとそこに居たのは遊女だった。いや、この出で立ち………花魁か。
威圧感が凄い。
足が竦みそうである。
果たしてこの威圧感は花魁の厳格からか、それとも違う“何か”なのか。
もう少し近づかないと判断ができない。
｢その先は私の部屋よ。｣
｢これは…失礼致しました。私、先日｣
歩み寄ったAの言葉が続くことはなかった。
目の前の花魁が放った張り手というには強すぎる威力の攻撃が、Aを弾き飛ばしたのだ。
咄嗟に受け身をとったが、全身を強打してひゅっと息が詰まる。飛ばされ壁に打ち付けられ、壁がパラパラと崩れた。周囲に瓦礫が散る。
まずい、かなり強く頭を打った。
視界が白黒と明滅する。
意識が保てない。
普通、人間…ましてや女である花魁にこのような力はでない。
此奴、鬼か。
ここまで近づかないと分からないなんて………この気配の隠し方、確実に上弦である。
｢蕨姫花魁……あのっ、その子｣
｢何よお前。口答えする気？｣
｢その子、入ったばかりの子で｣
音を聞き付けやってきたのか、おどおどと声をかける小さな娘。
恐らくこの花魁の禿だろう。
だめ、逃げて、此奴は＿＿＿＿
Aの意識はそこで途絶えてしまった。
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作者名：あちゃん | 作成日時：2021年1月10日 19時
