ひとやすみ 3 ページ38
数刻後、義勇を任務へ送り出した錆兎が戻ってきていた。どうやら彼は今日この後は非番らしい。
Aは気になっていたことがあった。
「ねぇ錆兎、昔一緒に花畑に行ったじゃない?」
「花畑?…ああ、先生の納屋の近くの。」
「そう。彼処に咲いていた花って何だったっけ。」
「お前が見たいって言ったから連れて行ったのに忘れたのか?」
錆兎は呆れ顔でははっと笑った。
やはり、鬼の血鬼術と本物では全然違う。
錆兎の笑顔に嫌悪を抱かなかったことにAは安堵した。
夢で彼処に咲いていたのは黒百合だった。
黒百合の花言葉は
____呪い。
皮肉にも自分にぴったりな花である。
己が受けているのは“神の寵愛”なんかではなく、“悪魔の呪い”だと、常々思っていたのだから。
「確か、燕子花じゃなかったか。
お前が俺の瞳に似ている葡萄色が綺麗な花が沢山咲いていると誘ってくれたんだ。」
「燕子花………。」
そっか。
嗚呼、幸せは確と此処にあったのだ。
ぶわっと己の中の黒百合が、燕子花へ塗り替えられていく。今度は鬼に荒らされないように、大切に大切に自分の中へしまい込んでおこう。
燕子花の花言葉
____幸せはあなたのもの
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作者名:あちゃん | 作成日時:2021年1月10日 19時