六十四 ページ27
「………A?」
「錆兎、私行かなきゃ」
先程から聞こえている声は、己を呼んでいる。
頭が痛い。
ズキズキと、電流が走っているような痛みが続く。
思わず頭を抑えて呻く。
「A、大丈夫か。
凄い汗だ、顔もそんなに顰めて…頭が痛いのか?」
錆兎と来たんだ、此処へ。
確かにきた。
けどそれは、ずっと昔。柱にも隊士にもなる前。
それに見たい花はこんな、こんな薄黒い花ではなかった。
じゃあ何だ。妙に現実感のあるこれは。
ドクン、ドクンと心臓が波打つ。
まだ何か大切なことを見落としている気がする。
あ。
これは、夢か。
血鬼術だ。
遠くで、ガタンゴトンと音が聞こえた。
そうだ、列車。列車に居たんだ。
杏寿郎を、
上弦が
私は
「っ!!!?」
「A!!!!!!!」
己から炎が燃え上がる。
真っ赤な炎。だけど熱くない。
花や錆兎は燃えることなくAだけが燃えていく。
錆兎が、顔面蒼白で己の名を叫んだ。
炎がさあっと消えると、己は隊服に身を包んでいた。大切な羽織も日輪刀もある。
それに、炎と共にはっきりと聞こえた声。
「頸を斬るんだ!!!!目を覚ましてくれ!!!」
あれは炭治郎だった。
炭治郎が、己や杏寿郎を起こす為に必死に声をかけてくれていたのだ。
頸を…………斬る……………。
Aにとって、死は人と違う種の恐怖が付き纏う。
繰り返してしまう。
ふと、黒百合が目に入った。
「ああ、なるほどね」
錆兎はいつの間にかいなくなっている。
Aは皮肉気に嗤った。
かちゃり、
漆黒の日輪刀を引き抜いた。
そのまま静かに頸元へ当てる。
心臓の音が煩かった。
自然と息が荒くなる。
ふぅ。と息を吐き、また吸った。
そして____
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作者名:あちゃん | 作成日時:2021年1月10日 19時