恋は盲目愛は無作為【ヴィランズ】 (ページ9)

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８話ページ9

「マルフィ・・今日が終わるまでは優しくしてくれるのか」

昔のことを思いだし、涙が溢れそうになる。

私の声は情けないぐらい、震えていた。

「ああ。泣きたいなら泣けばいい」

素っ気なく言った彼は少し悲しそうな顔をしていた。

気がついたときには、涙が私の頬を濡らしていた。

突如として視界が黒くなる。

私を包み込むそれは、マルフィの黒い翼だった。

彼の体温が体に伝わる。

これで何も見えていない状態だというのだから、驚きだ。

「決して深くは聞かない。だから、安心しろ」

大きな手で頭を撫でられ、次の瞬間には言葉が口をついていた。

「寂しい・・」

それに呼応するようにしてマルフィが言った。

「大丈夫だ。私がいる」

「辛い」

「知っているよ」

「怖い」

「独りが、か」

「うん。もう嫌だ」

「Aは独りじゃない。私たちが傍にいる。

　だから、大丈夫。もしものときは私が助けにいく」

普段からは想像も出来ないような優しい声で

慰めの言葉をかけられる。

「・・お前は優しすぎるんだよ。ばかっ」

「それは君も同じだろう？

　・・そろそろ帰らないとジョーに叱られてしまうな」

そんな呟きが聞こえたかと思うと、私の体は容易く宙に浮いた。

「まっすぐ飛べばホテルにつく。窓から入るか？」

涙を拭い、マルフィに訊いた。

「そうしようか」

部屋に入ると、案の定、半ギレ状態のエイトフットがいた。

「お前ら、どこふらついてたんだよ・・！」

「どこって、少し散歩をしていただけだが」

「それについては何も言わねえ。

　ついでに言うなら、Aに責任はない」

「私だけか！？」

そんな声を無視してエイトフットは続ける。

「外で翼を出すなって何回言えば理解できるんだ、お前は！

　いい加減にしろよ、鴉！

　あと、そろそろAを抱きかかえるのをやめろ」

「Ｗellwell、君の言い分は分かった。

　これからは気を付けるよ」

適当に返事をするマルフィに再びキレかけたエイトフットだったが、

観念して、部屋をでて行った。

段々、意識が朦朧としてくる。

くぁっ、とあくびをすると、マルフィがベッドに寝かせてくれた。

「おやすみ、A」

それを最後に深い眠りへと落ちていった。