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7話 ページ8

「・・夜になると何も見えなくなるくせに

 外を出歩くのはお前ぐらいだな」


空の上でマルフィに対して毒を吐いた。

マルフィが自分から夜の散歩に行こうだなんて

何の天変地異の前触れか、と警戒する。


「普段なら、こんなことはしないさ。今は君がいるだろう?」


こちらを見て微笑むマルフィを見て、

思わず彼の額に手を当ててしまった。


「・・何をしているんだい」


「いや。お前が私にそんなことを言うなんて

 熱でもあるんじゃないかと思って」


「ふふっ・・君が言ったんだろ?『明日からは遠慮なくいく』って。

 今日ぐらいは仲良くしてやってもいいんじゃないかと思ってね」


「・・明日からは、ほんとにいつも通りだからな。

 あ、そろそろ止まらないと、ホテルに戻れなくなるぞ」


すると、マルフィは降下を始め、地に降り立った。

私たちはコンクリートの上に座り込んで話し始めた。


「明日はここに人間が集まるんだな」


「ああ。そうだな」


「楽しんでくれるのは嬉しいが、うるさすぎる」


「君は騒がしいのが嫌いだったな。

 でも、君が魅力的だから人間たちは騒ぐんだろう?」


「しょうがないだろ。仕事なんだから」


はあ、とため息を漏らす。

私は昔からうるさい空間が苦手だった。

人一倍繊細な聴力を持っているが故に、喧噪は忌むべきものの1つだ。


会話もなくなり、静かに時が流れていく。

ふと空を見上げると、月は無く、星だけが輝いていた。


「・・A。そこにいるのか」


不安げなマルフィの声が聞こえた。

あぁ、今日は新月か。

月の光さえあれば、いくら鳥目だろうと少しは見えただろう。

今夜はそれさえもない。


「ああ、いるよ。ちゃんとここにいる」


「よかった。君がいないと私が帰れない」


「置いて行かないよ。お前がいないと調子でないし、

 部屋に独りなんて寂しいだろ」



私はうるさいのも嫌だが、独りも嫌いだった。

なんだか矛盾している気がするが、仕方ない。嫌なものは嫌なのだ。

生い立ちがもっと違ったら、どちらも苦ではなかったのかもしれない。


「ハイエナは群れで生活するからかい?」


彼は少々からかうような口調で言った。

それに対して私は遠くを見つめて言葉を返した。




「逆だ。・・私はずっと独りだった。

 だから、独りでいるのは嫌いなんだ」

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猫目石(プロフ) - つ、、、続きを御恵みくださいませ〜!! (2021年3月18日 17時) (レス) id: 5676b10c1c (このIDを非表示/違反報告)
アカネ(プロフ) - 面白いです!更新、待ってますね! (2018年10月24日 17時) (レス) id: 839f704c20 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蓮火 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2017年7月3日 23時

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