恋は盲目愛は無作為【ヴィランズ】 (ページ7)

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６話ページ7

風呂から上がり、自室へと向かう。

その途中でアップルに出会った。

「ああ、A。ちょうどよかった。

　これをマルフィに渡しておいてくれないか」

そう言って、差し出してきたものはアップルパイだった。

「ええ。いいですけど・・これ、アップルが作ったんですか」

「勿論。どうせ、マルフィは何も食べていないんだろう？」

さすが、最年長のリクルーターだ。

視野が広く、周囲を気遣う余裕がある。

アップルに背を向け、再び部屋へと歩きだした。

「全く・・マルフィも素直になればいいものを・・」

アップルの半ば呆れたような呟きは、

私の耳に届くことはなかった。

部屋の扉を開け、中に入るとちょうどマルフィが目を覚ました。

先ほどもらったパイを手渡すと、誰が作ったかを理解し、アップルか、と呟いた。

気まずい沈黙が空間を支配する。

パイを食べ終わったタイミングでマルフィが切り出した。

「A・・その、すまなかった」

「いや、謝るのはこっちだ。

　その傷じゃあ、明日のリクルーティング、参加できないよな」

「大丈夫さ。これぐらいならすぐに治る。

　頼むから、そんなに気を遣わないでくれ。私の調子が狂う」

「・・じゃあ、明日から遠慮なくいくぞ。鴉野郎」

「Ｗellwell・・君はそうでなくっちゃね」

互いに顔を見合わせ、妖しく笑う。

やはり、私たちはこうでなくてはいけない。

「これの詫びの代わりに、ちょっとつきあってくれないかい」

マルフィは自身の頬を指さしながら言った。

それを引き合いに出されると、さすがに断りづらい。

「いいけど、何するの」

「夜の散歩に行こうと思ってね」

「散歩！？僕も行くぞ！」

「ダ、ダルメシア！いつからそこにいたんですか！」

「Aがマルフィに鴉野郎って言ったあたり」

随分、前からいたのに気づけなかったな。

というか、ダルメシアの興奮具合が半端ではない。

まあ、元が犬だからな。

「駄目だ。私は、Aと話がしたい」

マルフィが素早く言い放った。

それを聞いたダルメシアは不服そうだったが、

案外すぐに引き下がった。

「えー。・・でも、しょうがないか」

そう言うと、部屋を出ていった。

きっと、相棒のジャックのところにでも行ったのだろう。

「行こう、A」

窓を開け、マルフィは私に手を差し出した。

いつもと全く違う様子に驚いたが、

了承した手前、引き下がることもできずにその手を取った。