恋は盲目愛は無作為【ヴィランズ】 (ページ5)

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４話ページ5

ホテルの屋根に座り、暗くなった空を見上げる。

先ほどの出来事を思いだすたび、

言いようのない不快感と吐き気が襲ってくる。

「ちょっとぉ、A。こんなところにいたら風邪ひくわよ！」

不意に明るい声が響く。

「スカー・・」

「・・あのナルシストに何か言われたんでしょ」

「大当たりですよ。スカーにはお見通しですね」

「あったり前じゃない。どれだけ一緒にいると思ってるのよ」

パシンと私の背中を叩くスカー。

彼女の天真爛漫さは、ときに支えになる。

私は少しずつ、さっきの出来事を語り始めた。

「・・あー。そういうことねぇ」

私のことをよく知るスカーは、納得の声を上げた。

何となく、悲哀の感情を含んだ声のように感じられた。

「辛かったら、いつでも私に言ってよね。

　さっ、中入るわよ！夕食の準備、もう終わってるからね」

「分かりました」

ホテルに戻ると、足早にダイニングルームへと向かった。

もう着くころには全員が席についていた。

・・いや、違う。ここにいるのはマルフィ以外のリクルーターたちだ。

「ダルメシア。マルフィは？」

隣の席のダルメシアに尋ねる。

「僕知らないよ。呼びに行ったのって、エイトフットじゃなかったか？」

「あいつなら、部屋で食べるって言ってたぞ」

「珍しい・・」

アップルが驚きに目を見開いた表情で呟いた。

「お前が呼びに行けよ、リンゴ」

悪戯っぽく笑いながらジャックが叫んだ。

それを無視してアップルは食事を始めた。

「Aさん、何か知りませんか？」

「そ、それは――――」

「また喧嘩したのよねー」

私の声を遮って、スカーが叫んだ。

この場の全員が、今の言葉で納得しただろう。

スカーを見やると、視線に気がついたのか、ウィンクをしたのが見えた。

本当は、彼女は気配りができる優しいハイエナなんだ。

それを表に出さないだけで。

「A。同室なんだから、ちゃんと仲良くするのよ」

「喧嘩もほどほどにな」

ハーデスとホックの淡々とした声が飛んでくる。

その裏に彼女たちなりの優しさが見えた。

「はよ食べんと、冷めてまうでー」

ファージャがスープを飲みながらみんなに向かって言った。

全員が冷たい食事はごめんと思ったのか、料理を口に運んでいく。

私たちは談笑交じりに、ときには小競り合いもありつつ、

楽しいひとときを過ごした。

ああ。私はこんなに恵まれていていいのだろうか。