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28話 ページ29

「――――い。―――おい。A!」





すぐそばで聞こえる大声が、Aの意識を浮上させた。

目を開けるが、視界がぼんやりしていて、状況が把握できない。

数度瞬きをすると、景色が鮮明に映った。





「まる、ふぃ・・?どうして・・」




「何を言っているんだ。私はきみと同じ部屋じゃないか」




マルフィが呆れたように息を吐いた。背中越しにシーツの当たる感触がある。

つまり、ベッドの上に寝ている状態ということだろう。

Aは冷静に今の状況を分析した。




「私、どうなって・・」




「覚えていないのかい?」





その言葉に頷くと、マルフィは腕を組み、口を開いた。

風呂上がりであろう彼は、普段とは違う美しさを放っていた。





「私が部屋に戻ってきたら、床に倒れていたんだよ。

 てっきり、品もなくごろ寝しているものだと思っていたのだが、

 様子が可笑しかったから、こうさせてもらったよ」




「気絶、してたのか・・」





倒れたときに打ったのだろうか。頭がズキズキと鈍く痛んでいる。

マルフィのそこそこ失礼な言葉に反論する気力も無くし、目を閉じかけた。

しかし、ポケットに何か入っていることに気がつき、そこに手を突っ込んだ。

冷たく硬いものが指先に触れた。形からすると小瓶の類だと思われた。

スカーから言われた言葉を思い出す。なるほど。アースラからの贈り物らしかった。





「どこに行っていたんだい?ホテルにいないから心配したよ。

 幸い、私しか気がついていなかったがね」



「マスターのところに、行ってた」



「ホームシックかい」



「違う。野暮用を済ませに」





マルフィが、合点がいったかのように頷いた。

一体何に対して納得したのか。




「リクルーティングの成果を報告しに行ったわけか」



「あ、うん・・まあ、ね」





歯切れの悪い口調でAが言う。

本当のことを言えるわけがない。そのようにスカーにも釘を刺されているのだ。

不意に、マルフィがAの頭を撫でた。闇の中で、彼の瞳が怪しく光る。





「辛かっただろう、A」





段々とマルフィの声が遠くなる。

意識が暗部へと引きずりこまれていくのを感じた。





「マルフィ、なに、を・・」





「もうおやすみ、可愛い雛鳥。いい夢を」





――――ああ、身体についた血痕を見たのか





それを最後に、Aの意識は途絶えた。

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猫目石(プロフ) - つ、、、続きを御恵みくださいませ〜!! (2021年3月18日 17時) (レス) id: 5676b10c1c (このIDを非表示/違反報告)
アカネ(プロフ) - 面白いです!更新、待ってますね! (2018年10月24日 17時) (レス) id: 839f704c20 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蓮火 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2017年7月3日 23時

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