恋は盲目愛は無作為【ヴィランズ】 (ページ19)

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１８話ページ19

リクルーティングは特に問題は無く終了した。

ホテルに戻っても、まだ先ほどまでの歓声が耳の奥に残っている。

喜んでくれるのは嬉しいが、あれは少し度を超しているように感じた。

「Aさん。お仕事が終わったのでしたら、お茶にしませんか？

　ちょうど、彼からタルトタタンをもらいましたので」

ヴェールがちらりと後ろに視線を向けて言った。

その先にいたのはアップルポイズンだった。

こくりと頷くと、彼女の部屋に案内された。

扉の先にはハーデスとホックもいた。

そういえば、３人は女子会仲間だったか。

「あら、A。おかえりなさい」

「ただいま。それにしても、ホック、ここに来るの早くないですか？

　さっきまで一緒にリクルーティングしてましたよね」

「時間は有限だ。それをいかにして上手く使うか、だろう？」

相変わらず、そこらの奴よりは男前だ。

「・・そのタルト、毒が入っているわけではないわよね」

ハーデスの言葉に一瞬、時が止まる。

「いや、いくら元毒林檎のアップルでもそんなことはしないと思いますよ」

私はそう言った後に、たぶん、と付け加えた。

さすがに、あのアップルがそんなことをするわけがない。

「ジャックさんへのものだったら分かりませんわ」

ヴェールの一言に、全員が頷いた。

確かに、午前中のあの雰囲気だったら、

アップルが毒を仕込んでもおかしくはない。

毒味に一口かじってみたが、特に変な味はしない。

「ん・・大丈夫、だと思います」

「貴女、勇気あるわね・・」

「ハイエナはそんなにヤワじゃないので。

　匂いも普通だと思います」

「野生の勘ってすごいですわ・・」

紅茶を淹れていたヴェールが呟いた。

ふわり、と茶葉の香りが鼻腔をかすめる。

「アールグレイ、ですか？」

「正解だ。これは、イギリスのものでな」

誇らしげにホックが言った。

どうやら、これは彼女が持って来たものらしい。

「じゃあ、始めましょうか」

ヴェールの言葉で、午後のティータイムが始まった。