恋は盲目愛は無作為【ヴィランズ】 (ページ2)

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１話ページ2

「・・遅い」

夕暮れ時の空の下で私はポツリと呟く。

ハロウィンの期間中、泊まるホテルから迎えがくる予定だったのだが、

約束の時刻から３０分以上経っている。

スカーは先に行ったらしく、今は私１人だ。

まさか時刻を間違えたのか、と不安になったその時

上からバサリ、と翼が羽ばたく音が聞こえ、黒い羽が舞い落ちてきた。

「おやおや。迎えに来てみれば、いるのは小さいハイエナじゃないか」

そして、嫌でも耳に届く憎たらしい声。

間違いない。

「黙れ、鴉。鳥目のくせに偉そうな口をきくな」

「そちらこそ、私に命令とはいい度胸じゃないか。

　空も飛べないネコが私の美しさに敵うとでも思っているのか？」

普段から私よりも高い位置に頭があるマルフィを

今日はさらに上を向いて睨みつける。

互いに一歩も引く気配がなく、一触即発の雰囲気をかもし出していた。

数分間は睨み合いの状態が続いていたが、

本来の目的を思いだし、はっとなる。

「・・ここで喧嘩はよそう、マルフィ。時間の無駄だ。

　それよりも、ホテルまで案内してくれないかな」

「地に足つけて走っているだけのハイエナは静かにしていろ。

　私が直接送り届けよう。私もリクルーターだからね」

その直後、私の体はふわりと宙に浮いていた。

翼を生やしたマルフィに抱きかかえられている状態だ。

ふと、空を見ると、すでに暗くなり始めていた。

「・・見えるか、マルフィ」

「ああ。さっきより多少は見づらくなったが、さほど問題はない。

　しっかり掴まっていろ、A。絶対落ちるなよ」

そう言うが早いかホテルに向けて、飛び始めた。

頬に当たる風の感触が新鮮だった。

ホテルに到着すると、かすかに声が聞こえてきた。

「もう、みんな来て・・・・グフッ！」

突如、強い衝撃と共に軽くふっ飛ばされる。

私に飛びついてきたのは、ダルメシアとスカーだった。

「ダルメシア・・スカー・・いきなり飛びつくのはやめろと

　何回言えば分かるんですか・・！」

「うん。やはり、君は獣と戯れているのが似合う」

「やめてって・・くっ、マルフィ・・先に行け」

マルフィは笑いながらホテルの中へと入っていった。

「A！遅かったじゃないか」

「ダーリンの言う通りよ！私、すごーく待ったのよ」

ダルメシアは『ダーリン』という単語を聞くと

嫌悪感をにじませた表情になった。

「迎えの烏が遅かったものですから、ね。じゃあ、行きましょうか」