if 白虎と初めの黒い龍 (ページ25)

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5・ブライドホワイトページ25

式場の扉を開いた先、ヴァージンロードのその先で待つ愛しの新郎は、袴姿がよく似合っていた。片割れに導かれながら、新郎の側に歩いていく。片割れをそれとなく守っていた幼時の思い出。東京卍會を知って、エマと仲良くなって、真一郎と出会った思い出。片割れとの一時的な離別の思い出。許されて、散々甘えた思い出。そして、真一郎との思い出。今までの人生がダイジェストで流れていく。
「李里を、…姉を、よろしくお願いします」
「はい」
小さな声で取り交わされた会話。エスコートの腕がほどかれて、真一郎の手に移る。
「李里」
名前を呼ぶ声がする。愛おしい、低い声。席に着く直前。李里は誓いのキスのように少し伸び上がってその唇に口づける。
割れるような拍手と祝福の声が降り注いだ。
「皆様、今日は私と真一郎さんのためにお越しいただきありがとうございます。母と、弟へ気持ちをこの場で伝えさせてください」
親族の席に居る母へ視線を向けた。驚いたような柔らかな表情が暗がりによく見えた。
「敬愛する母へ。貴女についていって後悔したこともあります。ですが、手探りで少しずつ愛をたくさん注いで育ててくれた貴女に深く感謝しています。私のお母さんで居てくれて、ありがとう」
少し視線をずらすと片割れと目が合う。気まずそうに形の良い眉が下げられた。
「親愛なる弟へ。心配することも、少しつらいこともあったけれど一緒に育ってくれてありがとう。最愛の人と出会うきっかけをくれてありがとう。貴方の心を傷付けることもあった。でも、私の弟で居てくれてありがとう」
声が震える。新郎の大きくて乾いた手が分厚い絹越しにそっと背を撫でた。
「…泣くつもりはなかったんですけどね。ちょっと、失礼。…私は、今、とても幸せです」
母は目に涙をいっぱいにためて、今にも雫を溢しそうだった。弟は照れたように視線をよそにやっている。あとは、なぜか万作も目をうるうるさせていて李里はちょっと笑ってしまった。
「湿っぽい空気にしてしまってごめんなさい。明るく楽しい式を目指していたのに…」
悄気ていると、真一郎にマイクを奪われる。そして、彼は向日葵みたいにニカッとした笑みを浮かべた。
「大丈夫だって。ってか、なんで爺ちゃんまで泣いてんだよ」
「仕方ないじゃろ！真一郎が一番結婚遅いと思ってたんじゃから！それがこんな…いい嫁さん貰って…」
「ちょっ、ひどくねぇ！？」
式場に湧く笑い。彼の明るさに救われた。