5・結婚準備と不良のファッション ページ23
卒業式のあと、きっちり約束通りに李里は目一杯抱かれた。互いの家族に挨拶する、と言っても大半は付き合い始めるときに顔を合わせていたので、反応は「もうそんな時期か。儂も歳を食うはずだ」や「ウチの子を、よろしくよろしく頼みます」や「真ニィと別れてもリリィはウチのお姉ちゃん分だからね」といった好意的なものだった。
「結婚式、どれくらい人呼ぶ？」
「あー…少なくともワカたちと東卍の幹部連中は呼ぶだろ？」
「あと、私の友達数人も…九井くんは巨額の祝儀持ってきそうで怖いけど…」
「十代目黒龍のか？」
「うん」
列挙した名前を書き連ねたA4のコピー用紙は厳つい名前が多い。その中にちらほら混じるかわいらしい名前も何かしらかつて不良少年だった彼らに関係のある名前だ。
「李里もオレも関係者ほとんど不良関係だな！」
「ほんとだ、エマちゃんに至っては兄3人全員元総長だし…」
不良多すぎ厳つすぎ…！と思えば、腹の底から泡のような笑いがぽこぽこと湧いてしまった。
「ダメだ…！みんなのスーツ姿想像したらガラ悪すぎて笑えてくる…！え、もしかして私結婚式の最中笑ってはいけないってミッションをしなきゃいけない…！？」
「ははは、大丈夫だろ！アイツらなんやかんやおしゃれさんだから最低でも反社感が出るぎりぎりのお洒落さで来てくれるだろうし」
楽観的に笑う婚約者にそうだね、と頷きそうになって、ふとトンチキセンスの関係者を思い出して待ったをかける。
「どうした？」
「花垣君とウチの弟、ある程度服装指定しとかないと多分事故コーデしてくるかも…」
「え」
「特に花垣君…龍宮寺君が刺されて入院したときあったでしょ？その時に会ったんだけど、やべークスリキメてないか心配になるセンスしてたんだ…」
今思い返しても笑いを通り越して真顔になるあのクソダサセンス。真一郎が参考までにどんな服装…？と聞いてきたのであの陽炎に満ちた夏の日を必死に思い出す。
「えっと、サングラスに…白シャツと、前面にデカデカとOUTLAWって書かれた膝より上の丈のスボン、だっ…たよ。髪型は、金髪でリーゼントだった」
場地と弟を救うことに必死で、服装の印象は薄れているがあのダサさだけは強烈に印象に残っていた。
「あー…じゃあ結婚式に呼ぶときはある程度服装指定だな…」
「うん、ついでにヒナちゃんに選んでもらうように連絡しとくね。あの二人まだまだラブラブらしいから」
頻繁に使われているメッセージアプリを開いて、文字を打ち込んだ。
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作者名：契 ゐと（元 いときち丸） | 作成日時：2023年11月6日 15時
