if 白虎と初めの黒い龍 (ページ3)

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1・仔虎、喉を見せるページ3

偶々初代黒龍の主要メンバーが店に集まっていた日のことだった。李里はひょっこり顔を出した。
「真一郎さーん、居ますかー？」
「お、李里ちゃん。シンちゃんなら店の奥だ」
「ワカさんありがとうございます」
勝手知ったる様子で走っていく後ろ姿を、慶三と武臣は怪訝な表情で見送る。
「アイツなんだ？」
「シンちゃんに懐いてる仔虎ちゃんってとこだナ」
「仔虎…」
3人の中で唯一李里を知っていた若狭は、それにしても、と首を傾げる。生活圏が被る部分もありすれ違う時もあるが李里は普段もっとシンプルで性別の分かりにくい服を着ている。しかし、今日の服装はどことなく少女らしい雰囲気だった。心なしか表情も嬉しそうであって、なんとなく覚えのある表情だと思った。
「…いや、まさかナ…」
「？ワカ、なんか言ったか？」
「いンや、何も」
店の奥の方へ視線をやる。近づく足音と二つの声。何を話しているかは分からなかったが、ひどく楽しそうな声色であることは分かった。扉が開いて、声が明瞭になる。
「それで、エマがな？『ケンちゃんの後ろに乗るのはウチだけが良い』つったんだよ。妹は両想いの奴居るし、マンジローもイザナもモテるし…オレも恋人欲しーわ…」
「真一郎さんはかっこいいし優しいからすぐに好きになってくれる人居そうなのにね」
「それがなー、今まで居ねぇんだわ…」
そう言葉を交わしながら扉を潜った李里の頭頂部を見つめる元総長の眼は、少女が見ていないのを良いことに危うい温度と光を宿していた。若狭は思わず背筋に走った寒気を隠せず軽く身を震わせた。

真一郎が席を外したのを確かめて、若狭は李里の隣に座って単刀直入に小さく耳打ちした。
「李里ちゃん、シンちゃんのこと好きなン？」
どかん、と赤くなった李里の反応を見るに自分の予測が当たっていたことを悟る。
「あ、言わなくて良いワ」
「え、もしかしてバレバレでした…？」
「周りから見てる分にはナ」
頭を抱えた李里に、告白しちまえば良いのに。と言えば困ったような微笑が返された。
「私、真一郎さんを殺しかけた奴のきょうだいですよ。その分の引け目がまだ消えない…否、きっと、生涯消えないんですよ」
そんな傷ついた顔をしなくても良いのに、と思った。