if 白虎と初めの黒い龍 (ページ19)

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4・やきもちとやきもきページ19

家に着いて、普段着に着替えると真一郎から電話がかかってきた。
「李里、降りて来れるか？」
「行けるけど…どうしたの？」
「ちょっと付き合って欲しいところがあって」
「分かった。あと何分くらいかかる？」
「もう家の前」
窓から見下ろせば、言葉通りの場所にバイクに乗った長身が見えた。
「すぐ行くね！」
「慌てて走ってコケるなよー」
すぐに降りていって、真一郎のすぐ横に駆け寄った。ヘルメットを被せられ、後ろに乗るように促される。跨がって胴に抱きつけば、エンジンの振動が来た。

　規定の速度で走ったバイクが着いたのは、大きめの商業施設の駐輪場だった。
「真一郎さん、どこに行くの？」
「ん？ナイショ」
置いていかれないくらいの速さで歩く恋人に小走りで寄って指どうしを絡めた。
「人少ないし、手、繋ご」
暫く固まったかと思いきや、はにかんだようでもありながらもすごく嬉しそうな顔をされる。
「…おう」
少し握る力が強くなった手は、ほんのりと熱くなっていた。
　目の前にあるのは学生向けと思われるアクセサリーショップ。普段着で来てしまったことがなんとなくいたたまれないなと思いながらそっと横顔を見上げる。機嫌が良さそうな、どこか緊張しているような。
「いらっしゃいませ。本日は何をお探しですか？」
「この子とのペアリングを作りたいんです」
繋いだ手に思わず力が入ってしまった。宥めるように真一郎のごつい親指が母指球の辺りをゆるゆると撫でてくるのがくすぐったい。
「少々お待ちください」
カウンターの奥へ店員が下がった。
「真一郎さん…？」
「オマエは女の子にも野郎にもモテるから閉じ込めときてぇけど、夢があるだろ？だから、牽制と予約」
あんまし高ぇの買ってやれなくてワリィな。そう言ってあまりに愛おしそうに左薬指を撫でてくるものだから、それがあまりにつがいを気に掛ける雄だったから、心臓から熱がじわりと湧いた。
「…真一郎さんこそ、男にだけは明らかにモテまくるくせに。同性特攻の魔性の男のくせに…」
「まぁ、オマエはそんなオレの事を好きになってくれたけど」
「んむむ…そうだね…」
照れ隠しと分かった上で口説きに持っていかれて、余計に真っ赤になるだけで終わる。でも、李里とてやられっぱなしではない。薬指をすりすりしてくる右手をほどいて、両手で掴む。
「頑張ってお金貯めたら、お高めのペアウォッチ買って贈るから覚悟しておいてね…！」
しっかりと不思議な引力のある眼を見て言い放った。