3・白虎、飛びかかる ページ14
昼間に部屋を暗くして観る、近くのレンタルショップで借りた映画。李里は座った真一郎の膝の上に横抱きにされて、それを見ていた。時折、背と脇腹の境目辺りと腹を緩やかに愛撫される。もう映画に集中どころじゃない。『李里が好きそうなやつ借りてみた』と言っていたのにあんまりじゃないか、となんとなく腹が立ってきた李里は、ちょうど目の前にある喉に軽く噛み付いた。
「!?!?」
真一郎の体がぴくんと跳ねて、その上に乗っていた李里は軽く揺れた。恋人の意識が一気に自分に注がれるのを感じる。それは、困惑と驚きと色情が綯い交ぜになったものだと感ぜられた。そのまま淡く歯型のついたそこに舌を這わせると肩を強く握られた。
「ちょ、李里サン！？」
「んー？」
「“んー？”じゃなくって…ぅあ、っ！？」
ちぅ、ちゅぷっ。可愛らしい音と共に筋張った頸筋に付けた赤い斑。その、独占欲の発露の縁を触れるか触れないかの距離でなぞりながら弁解を口にする。
「…真一郎さんが私を煽るから。悪い人。片手間に猫でも撫でるみたいに脇腹を、背を、腹を撫でて、私をいっぱいいっぱいにさせて」
理不尽で滅茶苦茶な理論だ。でも李里はこの程度じゃ恋人は自分を嫌いにならない自信があった。
「えっ、オレ撫でてた？」
「…がっつり」
真一郎の為に着た女性らしい衣類には撫でられた時特有の癖。李里は生物学的に女盛りで、恋人とのやらしいことに興味のあるお年頃だ。じわじわと高められた欲が弾けそうに膨らんでいる。残り香だけで恋に落ちそうになる甘い体臭を纏った身で真一郎にしなだれかかって鎖骨をなぞった。そしてそのまま服越しにそこに何度も口づけた。
「あ、ちょっ…と、ソレ、変な気分になるからヤメて…」
「やだ。そんな気分になってください」
懇願。掌に噛み付くようなキスをする。指同士を搦めて、余った親指で筋の目立つ手の甲をさすった。べったり触れ合った胴部に、興奮した拍動がはっきりと判った。
「私、もうそういうことの同意年齢を超えてるんです。いつまでも子供扱いしないで」
伸び上がって、真一郎の唇を舐める。そのまま襟を掴んで頭を自分の方へ引き込んで、舌を口内へねじ込んだ。粘膜の塊が擦れ合う水っぽくて粘着質な音。擬似的な閨事と言っても過言ではない行為だ。
「っ、それに、私をここまでしたのは真一郎さんだから、責任を取ってよ」
我ながらわがままになってしまったな、と熱に浮かされた頭の中でただそれだけを思った。
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作者名：契 ゐと（元 いときち丸） | 作成日時：2023年11月6日 15時
