if 白虎と初めの黒い龍 (ページ11)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:869 hit

2・白虎、乙女に振り回されるページ11

「リリィ真ニィの際どいところにキスしたの？！」
「唇とか頚筋とか鎖骨とか耳にはキスしたよ」
「李里先輩すごく攻めますね？！」
「そんな攻めてることになる？」
「真ニィ生殺しじゃん」
李里の顔自体はその弟とよく似ていて整っており、更に物憂げな表情でいることが多かったが故にその癖がついていて、若々しい姿とその表情のアンバランスさに妙な色香があるのだ。そんな匂やかなうら若い乙女に、急所や感覚の鋭敏な部分に口付けられる。エマの兄は健全で若く男盛りである。時折悶々とした表情で居たのはこれが原因だと推察できた。
「そっかぁ…そうだよね…真一郎さん健全な青年だもんね…」
好きをアピールするだけでそんなの全然考えてなかった…そうしょんぼりする李里を年下二人は頑張ってフォローする。
「や、私もケンちゃんにおんなじことしようとして叱られたから！好きが高じてやっちゃうことはあるって！」
「そうですよ、だからそんなに気にしないでいいです！」
「…そう？」
そっかぁ、と安堵する李里に、年下二人はつられて安堵の微笑みを浮かべた。
　女三人寄ればかしましいとはよく言ったもので、会話が弾みに弾み、あちこちを跳ね回った。
「李里先輩が佐野さんのこと好きだって気付いたのはどんな時だったんですか？」
「あ、それウチも聞いたことない」
「聞いても面白いものじゃないと思うけど…」
　好きだって気付いたのは、真一郎さんのお店で背中にひっついてた時。ワカさんっていう真一郎さんのお友達に、『李里ちゃんそんなシンちゃんにべったりじゃ彼氏できなさそう』って呟かれて、彼氏ができる未来を想像してみたんだけど、隣にどうしても真一郎さんが居る未来しか考えられなくて。その時に『私って真一郎さんのことが好きなんだ』って気付いたんだ。我ながら鈍感だよね。
　苦笑する李里に二人が色々な感情の混ざった表情になった。
「どうしたの？」
「先輩…恋人じゃない妙齢の男性とのスキンシップが激しすぎません？」
「やー、真一郎さんは自分の中で“お兄ちゃん”枠だったから…」
流石に、真一郎さんと恋人になったから他の異性とかにはスキンシップゆるめにしていってるんだけどね。
「例えば？」
「手ぇ繋いでたとこを、服の裾を摘まむだけにしたりとか」
「それなら許容範囲かな？真ニィもわりと距離近い方だし」
「本人に聞くのが一番早い気もするけど…」
そろそろ寝なさい、という李里の母の声が聞こえるまで三人は駄弁り続けた。