初任務と、母を亡くした子供 ページ7
日輪刀が届き、それは見事な稲穂色に紫電が走るものになった。それは雷の呼吸を使う者の色。刀鍛冶は良いものを見せてもらったと上機嫌で帰っていった。そしてその翌日、初めての任務が入った。
「それでは、行って参ります」
隊服に合わせた短いブーツと靴下留めで留めた脹脛までの長さの靴下。それに隊服という出で立ちで、腰に日輪刀を佩いて歩き出す。その後ろ姿を、時代が違えばテレビの向こうで初めてのおつかいを見守るような視線で光穂と穂希が見つめていた。
自分の鎹鴉である
「あ、最終選別ぶりですね」
「そうだな」
「任務の内容は頭に入ってます?」
首肯が返ってきた。任務の内容は子供が消えると噂の、滅んだ村の神社に向かうことだ。
「…それにしても、子供、か…」
「もしや、苦手ですか?」
「ああ」
目が見えていないとは思えない足取りで小柄なAに合わせた歩幅で歩く悲鳴嶼についていきながら会話を続けた。
「そうですか…私も実は少し苦手です。あんなのほぼ未知の生命体ですよ」
「…君は何歳なのか底が知れない」
「恐悦至極。女性の年齢はわからないくらいがちょうど良いと思いますよ…っと、着きましたね」
丹色の鳥居は所々剥げ、石段は細かく欠けている。
「いかにも居そうな雰囲気ですね」
「ああ」
暫く様子を窺っているとゆらゆらと引っ張られるように子供が歩いてきた。ひょい、と鳥居の影から飛び出す。
「やぁ、こんな所になんの用かな?」
子供は茫洋とした目で鳥居の向こうへ進もうとする。まずいと察したAは藤のオーデコロンを子供の鼻の下に塗った。子供の目に光が灯る。
「どうして君はこんな所に来たの?」
「…うぁあぁあぁん!!かあちゃぁあああん!」
涙ながらに語られた内容は、死んだ母がこちらにおいで、と手招きしていたというものだった。
「そうか、辛かったね、悲しかったねぇ」
泣き止むまで頭を撫で、烈火のように泣いていた勢いが下火になってきたのを見て、Aは子供に口を開くように言う。そして、金平糖を一粒口に放り入れ藤のお守りを持たせた。
「このお守りを持って帰りな。帰り道は分かる?」
子供は首を縦に振った。ならば、まっすぐ帰ってね、と帰り道の方向を向かせて背中を軽く押した。
「すみません、時間を取らせちゃって…」
悲鳴嶼に向き直って詫びを入れる。構わないと返事が来た。
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作者名:契 ゐと(元 いときち丸) | 作成日時:2022年8月8日 20時