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満身創痍 ページ31

朝日の内に、何百年と生きた鬼が散る。はらはらと桜花が如きその様を静かに眺めた。最後の一片が空気に融けていった時、そっと息を吐く。
「…さ、帰って英気を養いましょう。狡猾な鬼舞辻無惨は上弦の壱が斃れたことで何か仕掛けてくるかもしれませんし、万が一に備えておいて損はないでしょう」
 いやはや、疲れましたよ。と言ったきりAは地にどさりと伏した。脇腹からはまだ血が洩れている。
「A。しっかり処置をしなさい」
悲鳴嶼に抱え上げられて、どっかりと地面に胡座をかいた上に座らされる。
「…あー、どうも…」
上着とシャツの間に巻いていた白い布を緩慢な動作で引っ張り出して傷口を覆うようにややきつめに巻く。じわりと清潔な布に赤が滲んだ。
「…鳴柱を蝶屋敷まで」
「了解いたしました」
「また今度」
「ああ」
確約できない挨拶。だが、どうしてかこうしたかった。

思い出す→←血に酔うは鬼か人か



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作者名:契 ゐと(元 いときち丸) | 作成日時:2022年8月8日 20時

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