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血に酔うは鬼か人か ページ30

いきなりの突飛な言動に気が違ったかと思った実弥は小さくAに呼び掛けた。
「…おい」
「すみませんね。血に酔っているんです」
Aの目はどこまでも冷えきった理性で埋め尽くされていた。
「そんな化生に身を堕としてまで何がしたかったの?何になりたかったの?何を成し遂げるでもなく生き続け、元同族を喰らう畜生に墜ちて認められること無く生きるだなんて恥ずかしい生き物。あまりにかわいそうだからその首を落として差し上げましょうか?」
あえてAは『かわいそう』だと言った。プライドの高い人間なら、この言葉で己のことをバカにされていると感じるだろうと考えているのだ。目論見通り、黒死牟は濃密な殺気を出している。あまりに計画通りに運ぶ状況にぞくぞくしたものが背筋を走った。
「てめぇ、怒らせてどうすんだよ…!」
「…こうするんです、よっ!」
突っ込んできた黒死牟の背後を取って、安全靴を穿いた足の甲で思い切り足の間を蹴り上げる。勿論、男性の急所だ。いとも容易く行われるえげつない行為に風柱は顔を少しひきつらせた。だが、またとない好機だ。それを逃す程馬鹿ではない。実弥の刀が、黒死牟の首の細胞を断ち割っていく。生きようと抵抗して黒死牟が刃を生やそうとした。まずい、と息を呑んだ時、最年少の柱の声が割って入り、肉から生えた刃が折られた。
「鴉の連絡、こっちまで来たよ。」
わぁ、気持ち悪いのとやりあってるね。と言われ、全くもってその通りだと風柱や自分への攻撃を相殺、反撃しつつ頷いた。
「その気配…我が子孫か…」
「おじさん誰?僕、あなたみたいな気持ち悪いのと血縁だなんて信じたくないんだけど」
不愉快そうな無一郎は刺々しく突き放すような言葉の刃で切り裂いた。
「行冥さんも来てくれたんだ」
Aは声に喜色を少し混ぜて伸びてくる攻撃を相殺して無一朗と共に来ていた悲鳴嶼に声を掛ける。
「ああ、お前が先日手酷く傷つけられた相手だ。助太刀しようと思うのは当然だろう」
「あなたたちが来てくれたなら心強いや」
冷えた表皮さえも温かい血が巡るようだ。鼓動が高まる。くつくつと体が熱を帯びていく。高揚した腓腹筋がたわんで、一気に弾けた。
「おらぁあぁあ!!」
一気に肉薄して頸に刃を叩き込む。硬くてAでは力が足りなかったが、黄金色の峰に白い刀が重ねられる。ぶしゅりと脇腹に目がついた刃が突き刺さった。だが、止められない。手斧が、翠の刀が目のついた刃を綺麗に折り去った。

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作者名:契 ゐと(元 いときち丸) | 作成日時:2022年8月8日 20時

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