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潔い炎 ページ15

ある日、鎹鴉の筧が慌てて飛んできた。Aの腕に止まった彼は息を整えてから炎柱が柱として復帰できない程の重傷だという知らせを伝える。
「そう。忙しくなるね」
「アト、炎柱ガオマエニ謝リタイコトガアルト言ッテ呼ビ出シテイタ。行クカ?」
Aは黙考した。何故この時機で謝ろうと言うのか?
「獪岳、ついてきてくれる?」
「良いですよ」
隊服を纏い、目元に軽く紅をはく。紅筆を置いたときには獪岳は既に準備を終えていた。
「待たせてごめんね。行こうか」
継子を伴って、炎柱邸へと歩く。もう冬の足音が少しずつ忍び寄ってきているのでさして汗は掻かなかった。
「ここが、そうなんですね」
Aは炎柱邸の門前に立ち尽くす。足がすくむのだ。
「師範?どうしたんですか?」
「怖くて、足が動かない」
情けない、と吐き捨てるようにAはこぼした。そこに、羽音が近づく。
「久シ振リダナ」
「…要さん」
Aの腕に止まった鴉は羽を畳みながら体重の位置を調節した。
「ソウダ、要ダ」
要は煉獄に案内を任されたのだと胸を張った。要が居ると、心理的な敷居がさらに低くなる。獪岳に手を握ってもらいながら、門をくぐった。
「不甲斐なくてごめんね」
「いえ、俺は気にしませんから」
むしろ、もっと俺を頼ってください。と獪岳はにこやかに笑う。
「頼もしいね」
「イチャツクノモソノクライニシテクレ、杏寿郎ハスグソコニ居ルゾ」
「いちゃついていませんよ。要さんってばお茶目さんですね」
「よもや、どう見てもそういう風にしか見えなかったのだが」
炎のような髪、膨らみを喪った左目を隠す布。ふふ、と笑おうとした声が、喉に貼り付く。瞳孔が開いて背中の立毛筋が収縮した。
「どうも、お久しぶりです」
挨拶を絞り出す。煉獄の目が少し伏せられた。
「して、ご用件とは」
煉獄は彼らしくなく目線を彷徨わせてから、決心したように口を開いた。
「…許されるとは思っていないが、今まで君にとんでもない暴言を言ったことを謝りたい」
すまない。と頭が下がる。Aは深い溜め息を吐いた。
「謝罪は受けとりますから顔を上げてください。許すかは別として、とかく原因究明が先です。いつ、おかしいと気づいたか教えてくださりますか?」
「ああ。その前にそこに座りなさい。立ち話では疲れてしまうだろう」
長話の予感がしたが、縁側の座布団にAと獪岳は座った。
 煉獄は、完全に夜が明けて暫くしてから違和感に気づいたと語る。それは新たな可能性だった。

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作者名:契 ゐと(元 いときち丸) | 作成日時:2022年8月8日 20時

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