柱合会議 ページ14
目の前で展開される小競り合い。お館様がいらっしゃる前にそんなことをするのは駄目ではないかと、じとりと周囲を見回した。夢柱が少年を庇っているから別にAがでしゃばる必要はない。
「どう思う、鳴柱」
岩柱に問いかけられて眠ったように伏せていた目を開けた。
「恋柱も言っていたように、お館様を待った方が良いと思います」
きっちりかっちりした模範解答を返す。つまらなさそうに数人がふん、と鼻を鳴らした。夢柱はAを睨んでいる。返答が気に入らなかったらしい。Aは何食わぬ顔で空を見上げた。青空だ。ふと、何故鬼は月光で死なないのだろうか、と思索を巡らせる。月光は月に照り返った日光だ。紫外線量の問題か、それとも時間帯に問題があるのか。月光はB波を含まないから日焼けすることはまずない。ということは、鬼は日焼けが大敵ということか。なんだその、中にある女性の記憶の欠片にあった美白を売りにする芸能人みたいなの。と、下らない思考をした。
「…ぁふ…」
いい天気なので欠伸が出た。あー、こんなことならばっくれて継子と美味しいもの買い食いするんだったな、と後悔した。
お館様の御成りです。という声と共に当主のが現れた。当主は、空は青いのかな、と朗らかに笑う。風柱が少年に対していた荒々しい態度を思わせない礼儀正しさで挨拶することに少年は変なものを齧った時のような顔をしていた。
結論から言って、会議は荒れた。流血沙汰、少年は風柱に悪態を吐く、個性派ばかりを取り揃えるとこうなるよなぁ、とAは軋むように痛む胃の辺りを擦った。早く帰って継子にのんびり癒されたい。そして、少年が出ていったあとの議題は、隊士の質の低下だ。夢柱が何か言うと、だいたいその方向に行く。うまくいったこともあるが、かなりの確率で失敗している。上がこんな感じなら、そりゃあ下も下だわ。と遠い目になった。
「もう帰ってよろしいでしょうか。今夜の任務に合わせて、英気を養っておきたいのですが」
もう話すことはないと判断したAは踊る会議にお伺いを立てる。お館様はにこりと笑って許可した。
「そうだったね、Aには上弦かもしれない案件の調査を頼んでいる。だから、もう帰っていいよ」
「それでは、失礼させていただきます」
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作者名：契 ゐと（元 いときち丸） | 作成日時：2022年8月8日 20時
