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閑話 猫談義 ページ11
岩柱の邸をAは訪れていた。なにを隠そう、新しくきた子猫についてお喋りしたいと言われたのだ。Aは同期というだけでなく、悲鳴嶼と猫好き同盟を結んでいる。
岩柱邸には沢山猫が居る。柱同士の連絡で来る度に撫でていたら見事懐かれ、元より猫好きだったAはふわふわとろとろな声でかわいいと悶えていたのを悲鳴嶼に見つかって、そこからさらに仲良くなった。
「行冥さん、来ましたよ」
「ああ、よく来てくれた。こちらだ」
小さなころころとした毛玉が、元気よく走り回ってぴゃあぴゃあ鳴いているのだ。かわいくないわけがない。好奇心旺盛な子猫は知らない匂いが気になったのだろう。Aの匂いを嗅いだかと思いきや、袴に爪を立ててばりばり登ってきた。
「ヴっ、かわいい…」
「そうだろう？」
そういう悲鳴嶼は、美ネコを横に侍らせてカシカシと顎の下を撫でてやっていた。ぐるごろごろと喉が鳴る音が聞こえる。
「南無ネコかわいい…」
「ネコは世界の真理だもんね…この重みといい、温かさといい、柔らかさといい、形といい、だっこしたときにしっくり来るんだよなァ」
ねー、と両手の中にすっぽりはまった子猫に話しかけるとぱむ、と鼻をしばかれた。
「ありゃ、しばかれちゃった」
「ふふ…」
束の間の平穏。それは、万金に値する素晴らしいものだ。
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作者名：契 ゐと（元 いときち丸） | 作成日時：2022年8月8日 20時
