第98話 ページ49
〈side 悠〉
勝手だけど、とりあえず形兆くんを訪ねてきた男の子を、虹村邸に上げてしまう。
その間も、男の子はしきりに「千円女」という言葉を口にしていた。私のことらしいけど、なにそれ？
???「ずっと前のことだがよ〜。おれの連れ三人が、知らない女にカツアゲしちまったんだよな。
そしたらよ。その女は、おれの連れ三人にそれぞれ千円ずつ寄越して、さっさと降伏したんだ。
それからあいつらが、その女のことを『千円女』だって呼んでたからよォ、おれも覚えちまったかな。
一応おれも謝ったんだがよ〜、覚えてねえのか？」
……あっ！もしかして、6年前の話？
確か、不良の女の子三人組に声をかけたら高級チョコレートを求められたから、お金を渡して逃げてきたんだ。
???「なんて言ったか、アンタの名前？
ちゃんと聞いたんだよ、なんだったっけなァ〜。
…そうだッ、悠！アンタ、悠って名前だろ！」
当てられたことが嬉しいのか、男の子は思いの外嬉しそうにうなずいていた。
それにしても、何を目的にやって来たんだろう。
帰ってくれそうもないので、彼の話に適当に相づちを打っておくことにした。
???「にしてもだぜ。おれってよ〜っ、やっぱりカッコよくて……美しいよなあ〜っ」
『うん。』
???「ひかえめに言ってもミケランジェロの彫刻のようによぉ〜ッ」
形兆「…うるせぇぞ、噴上。その人に迷惑かけんじゃねえ。」
「噴上」と呼ばれた男の子の大きな声が聞こえていたのか、ヌッと形兆くんが現れる。
案の定、寝ていたところを起こされたのか、彼は見るからに不機嫌そうな顔をしていた。
裕也「よぉ虹村ァ〜、そろそろおれらのチームに入る気になったか？お前のそのガタイでよ〜、バイク乗り回したらカッコいいぜ。」
形兆「…こいつは噴上裕也っつー暴走族の同級生だ。ナルシストだから話は聞かない方がいい。」
裕也「無視すんじゃねーぜ〜。」
暴走族！それに形兆くんは誘われているんだ。
形兆くんのクラスメートと数年前に会ったことがあるだなんて、なかなか確率的な奇跡なのかもしれない。
『あ……。こんなタイミングで悪いんだけど、形兆くん。私そろそろおいとまするね。』
形兆「…ああ。いろいろ世話になった。」
『掃除しただけだよー。というか、また話聞きに来るから。あとで連絡するね。』
このあとの予定として、最近ここ杜王町に引っ越してきた知り合いに、引っ越し祝いを届けることになっている。
相手は忙しい人だから、時間に遅れないようにしないと。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 42人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
キョウべえ(プロフ) - ピーカンパイさん» うるさくなんかないですよーっ、いつも嬉しいです！原作の花京院への罪悪感と共に書きました。すまない……。いつもありがとうございます！ (2020年8月13日 5時) (
レス) id: f69dbdccac (このIDを非表示/違反報告)
キョウべえ(プロフ) - 姉御さんさん» いつもありがとうございます！嬉しいこと言ってくれちゃって〜！です！暗チ…もっと登場させたいです…。ギアッチョの出番なんて無理矢理ねじ込みました笑 (2020年8月13日 5時) (レス) id: f69dbdccac (このIDを非表示/違反報告)
キョウべえ(プロフ) - ゆゆさん» いつもありがとうございます！どうか幼い時の彼にも幸せに生きていてほしいという欲望の賜物であります……！ (2020年8月13日 5時) (レス) id: f69dbdccac (このIDを非表示/違反報告)
キョウべえ(プロフ) - Toyさん» いつもありがとうございます！暗チは…本当に素晴らしいですよね……！梅雨明けで毎日暑いですけど、お互いに生き延びましょう…。 (2020年8月13日 5時) (レス) id: f69dbdccac (このIDを非表示/違反報告)
ピーカンパイ(プロフ) - 今現在私は絶滅危惧種になりそうです(?) (2020年8月11日 1時) (レス) id: e408f95724 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：キョウべえ | 作成日時：2020年8月8日 6時
