10*電波の先で導いて ページ11
部屋に戻り、おかずを捨てる。
ぐしゃっと音がするたびに心も潰れていくようだった。
さっきジンさんやナムジュンさんは優しくしてくれたけれど、傷つくものは傷つく。
これを何週間もずっとやられたらと思うと、気が遠くなりそうだった。
『は...、』
またつきそうになったため息を何とか嚙み殺す。
ため息は幸せが逃げる。ダメだダメだ、頑張らなきゃ。
最後のおかずをビニール袋に滑り込ませたとき、発つ前に料理を教えてくれた母親の顔が脳裏をよぎって、手が震えた。
ー...無理かも。
そう思ったときだった。
スマホが着信を伝えて震える。私がぱっと画面を見ると、そこには教授の名前が表示されていた。
『はい、もしもし...』
【あっ!出た出た、元気してるぅ?イケメンに囲まれてウハウハだろう】
空港で別れたぶりに聞く教授の声。
大学で雑談をしている時と変わらぬテンションに、懐かしさで胸がいっぱいになった。
『あはは、それはもう...』
ウハウハで絶好調ですよ。
そう続けたかったけれど、できなかった。
自分でも知らないうちに涙がぽろぽろと頰を伝う。
『...っえ、あれ、すみませっ...なんか、』
【キツいんでしょう。ごめんね、行かせちゃって】
教授の優しい声色にハッとする。
電話口で、いつもの教授の椅子がギッと音を立てるのがかすかに聞こえた。
『...キツいです、教授。正直、もうやめたいです...』
【うん】
『頑張りたいんですけど、朝ごはん食べてくれないし、すっごい気まずく...て、』
【うん】
『母にも言えないし、...どうしていいか...』
漏らした言葉は、本音だった。
ずっと気を張っていたから、糸が切れたらあっという間で。
立て続けに襲う嗚咽に抗いきれず泣く私に、教授は慰めるでもなく静かに言った。
【重要なのは観察と行動だよ、Aさん。語学もね、現地に行って観察と行動を起こすのが一番覚えやすいでしょう。
今、誰が何を求めているかを見極める。何故、今の状況が起きているか考える。...彼らもプロだからね、君も何かのプロにならないと、決して対等には接してもらえないよ】
『...プロ、』
呟くと、彼は満足したように緊張を解く。
【さてと、僕は今から講義だから】
『あっ、はい!...教授、ありがとうございました!』
【うん】
電話を切る。
彼は一度も、戻ってこいとは言わなかった。
それが答えだ。
ここにいるのはプロなのだ。泣き言は、努力をしてからにしよう。
言葉を反芻して、前を見据えた。
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Gettoin - 素敵なお話がここで終わってしまうなんて…寂しいです!首を長くして待ってます。 (2020年10月7日 13時) (レス) id: b24edd395c (このIDを非表示/違反報告)
なっちゃん - ジミンとお買い物 (2018年5月19日 14時) (レス) id: 8dfe945fda (このIDを非表示/違反報告)
ゆきこ(プロフ) - すごく楽しいです。頑張ってください。(p*'v`*q) (2018年4月27日 14時) (レス) id: 1bff26710f (このIDを非表示/違反報告)
リン - 面白いです!あっ、あと…出来たらでいいんですが、、#テテが主人公のお気に入りになるように頑張る ところと グクが家事を頑張る主人公に一目惚れするところを書いてほしいです!よろしくお願いします。 (2018年3月5日 0時) (レス) id: 2e9e2e5043 (このIDを非表示/違反報告)
Remon.V - メンバーが風邪引いちゃったり、助っ人と来てモデルをさせられたり、あと、みんなと買い物とかはどうですか? (2018年2月22日 22時) (レス) id: 7ed4bcc834 (このIDを非表示/違反報告)
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