【H×H】ゾルディック家長女（偽）の道行

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周りに十分なスペースを確保できるよう気を配りながら、Aは緩やかにペースを上げたり下げたりして集団内を見て回った。

依頼人(故)によればターゲットはライセンスを取る実力はあるということだったから、今からターゲットの特定に励む必要はない。単純に受験者のレベルと、知り合いがいるかどうかに興味があった。

「なああんた、ルーキーだろう？」
「ルーキー？ まあ、そうですけど」

Aは首を巡らせて隣にやってきた小太りの男を見下ろした。

「俺はトンパってんだ。今年で三十五回目のベテランさ」
「えぇ？ ああ、じゃなくて、どうも。A＝ゾルディックです」

そんなに落ちるものなのか、とAは内心驚愕した。今一つ隠しきれなかったが。

「わからないことがあったら何でも俺に訊きな。ほい、これはルーキーへのプレゼントだ。喉渇かないか？」
「ありがとう」

トンパは鞄から缶ジュースを取り出してよこした。よくもまあ重いものを持っているものだ。
少し不審に思ったが、ゾルディックを名乗るものとして毒は効かない体質なので、Aは普通に中身を飲み干した。

男が離れていった後、何やら周りの受験者がこちらを見てほくそ笑んでいる。悪意を形にしたような笑いだ。

「ククク……♦」

中でも目立つ含み笑いを耳が捉えて、げんなりと彼女は顔をしかめた。
ちらっと見るとわざわざ前の方から近寄ってくる、オールバックピエロメイクの自称奇術師他称変態。

そいつの名前をヒソカ＝モロウと言う。

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