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一つ。
≪
二つ。
Aの趣味は正々堂々真っ正面から罠を踏み潰すことだ。
目一杯開いた状態だった口を素早く食い縛る。
足裏に貼り付いた
結果的に――Aは僅かに速度を落としただけで、罠の上を駆け抜ける。
ヒソカの本気で驚いた顔を久しぶりに見た。
「どこでも走ってこいって、きみが言ったんでしょう――!」
ヒソカの右手が何かを弾く動作をする。
悪寒に震えたのと、左手首が不自然に引かれたのは同時だった。
再び姿勢が僅かに乱される。手首には何もない――なぜなら凝をしていなくて見えないから。
「嘘つき!!」
「そうだよ♥」
互いに振りかぶった右手を降り下ろす、それだけの猶予しかない。
激突。およそ生物の身体から発されるものではない轟音が、試験会場全体を震わせた。
「……おっも……」
Aは呻いた。ガードした左腕にヒソカの拳がめり込んでいる。
向こうの凝とパワーにゴムと彼女の速さが加わったのだから当然だが、それにしても痛みを通り越して痺れるような重さのパンチ。
「いたた♠」
ヒソカが全く痛くなさそうに嘯いた。
ぴんと伸ばしたAの指は、ぎりぎり彼の左目、眼窩の縁にかかっている。その指の切れ味はナイフより鋭く、指先の僅かな動きで眼球を切り裂ける。
「降参してくれない? これ殺り合いじゃなくてハンター試験でしょ」
「そうだね、うっかり隠しちゃったのはボクだし♣」
「ほんとだよこの嘘つきめ……」
「『まいった』♦」
それを聞いてからAはゆっくりと変形させた指を戻して、手を下げた。ほぼ同時にヒソカも拳を引く。
彼は笑う。その左の目尻が僅かに切れて、血の涙を流しているように見えた。興奮冷めやらぬといった面持ちが全てを裏切っているが。
「次は本気で
「やだやだやだ……」
溜め息をついてAは壁際に下がる。レオリオが顔色を変えて駆け寄ってきた。
「おいおい、腕大丈夫か!?」
「うん? 大丈夫だいじょうぶ」
Aはひらひらと左腕を振ってみせる――ただし、幻影の。
心配しなくてもばっちりしっかり折れているので安心してほしい。レオリオの医師たる素質は本物だ。
幻影で動作を誤魔化しつつ、彼女はこっそりへし折れた腕を抱えた。痛い。普通に痛い。
406番、A。
ハンター試験、合格。
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海野(プロフ) - sakuさん» そのとおりですね。指摘ありがとうございます、記述を訂正しました。 (2019年4月9日 8時) (レス) id: 542ac62a81 (このIDを非表示/違反報告)
saku(プロフ) - すみません。ページ12で『白日の詐欺師』にも隠は効くっていうの、そもそもの能力発動条件をクリア出来てないんじゃないでしょうか?纏以外使えないという条件でしたよね?間違ってたらすみません! (2019年4月7日 12時) (レス) id: 7af2b9ccfb (このIDを非表示/違反報告)
海野(プロフ) - sakuさん» コメントありがとうございます。心外ピエロの作者と個人的に交流があるのですが、sakuさんがどちらにもコメントをくださっていてびっくりだねという話をちょうどしておりました。いいですよね。続編も続けられるよう頑張ります! (2019年2月3日 8時) (レス) id: 2600401e00 (このIDを非表示/違反報告)
saku(プロフ) - 心外ピエロ私もよんでるんですが…いいですよね!あと、更新お疲れ様です。相変わらずとても面白かったです。 (2019年2月2日 22時) (レス) id: ee214ae639 (このIDを非表示/違反報告)
海野(プロフ) - 操菜 荘椏さん» コメントありがとうございます。これからも頑張ります。 (2019年2月2日 19時) (レス) id: 2600401e00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海野 | 作成日時:2019年1月16日 13時