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三歩。
ヒソカとの距離を詰めるのに必要な歩数だ。
一歩、駆け出し。
二歩、ここでトップスピード。
三歩目で間合いに入る。右腕を引き絞る。
受験生の誰も追えない速さで駆けるAを、ヒソカはしっかりと捉えている。滑らかにガードの左腕が上がる。
四歩目、左にスライド。
ヒソカの目だけが彼女を追う。Aの身体は彼を通り過ぎる。前に出した脚が彼の後方に着く。
後ろの脚を蹴り上げる。咄嗟に反応した右腕にガードされる。
ヒソカのカウンター、回し蹴りの爪先が胴体の腹にめり込む。逆らわずに脚二本で跳躍、勢いを利用して壁際へ。
「ち」
「ふ♣」
壁に着地するまでコンマ八秒。
床を蹴った音。
Aは身体を捻る。顔を吹き飛ぶ先に向ける。ヒソカが笑いながら待ち構えている。着地を大人しく待ってくれたりはしない。
ヒソカの指から≪
ゴムが勢いよく縮む。ミートまでの時間が残りコンマ二秒に短縮。姿勢が崩れる。
「っこの――！」
時間が引き延ばされる感覚。目を限界まで見開いて、迫るヒソカの拳をコマ送りで認識する。
脚を畳む。腹を庇う。凝付きの拳が直撃、絶息。
――息くらいしなくてもバトルはできる。
拳を足場に、身体を床に向けて落とす。強制的に両手で着地。床を掴んで下半身を旋回。強く伸ばした爪先がヒソカの追撃を弾く、ついでに肌を裂く。
ヒソカは大きくバックステップ。三度膝をたわめて跳んで、彼が構え直すのとAが脚を床につけるのはおおむね同時。
げほ、とそこで初めてAは咳き込んだ。衝撃に縮こまった肺を叱咤する。
フェーズワン終了といったところ。有効打はヒソカが一つ。
観衆は静まり返っている。糸を張ったような緊張感に、今この広間は支配されている。
ヒソカは血の滲む掻き傷を撫でてにたりと笑った。
「やっぱキミ、最高だよ♦」
「げほ、――ふん」
脳内麻薬が噴出する。アドレナリンに全身が浸かる。ダメージは理性だけが処理して、痛覚神経は眠りについた。
「――上等だね」
実際のところ。
戦闘狂でなくたって、こうもギリギリの戦いを強いられればハイになるのだ。
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海野(プロフ) - sakuさん» そのとおりですね。指摘ありがとうございます、記述を訂正しました。 (2019年4月9日 8時) (
レス) id: 542ac62a81 (このIDを非表示/違反報告)
saku(プロフ) - すみません。ページ12で『白日の詐欺師』にも隠は効くっていうの、そもそもの能力発動条件をクリア出来てないんじゃないでしょうか？纏以外使えないという条件でしたよね？間違ってたらすみません！ (2019年4月7日 12時) (レス) id: 7af2b9ccfb (このIDを非表示/違反報告)
海野(プロフ) - sakuさん» コメントありがとうございます。心外ピエロの作者と個人的に交流があるのですが、sakuさんがどちらにもコメントをくださっていてびっくりだねという話をちょうどしておりました。いいですよね。続編も続けられるよう頑張ります！ (2019年2月3日 8時) (レス) id: 2600401e00 (このIDを非表示/違反報告)
saku(プロフ) - 心外ピエロ私もよんでるんですが…いいですよね！あと、更新お疲れ様です。相変わらずとても面白かったです。 (2019年2月2日 22時) (レス) id: ee214ae639 (このIDを非表示/違反報告)
海野(プロフ) - 操菜 荘椏さん» コメントありがとうございます。これからも頑張ります。 (2019年2月2日 19時) (レス) id: 2600401e00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海野 | 作成日時：2019年1月16日 13時
