【H×H】ゾルディック家長女（偽）の道行

受験 ページ4

Aの自慢は足が速いことだ。

どこまでもいつまでも、強靭な脚で狼のように駆け続けることができる。自動車より速く走ることなど朝飯前だし、ちょっとオーラを回せばどんな交通手段よりも速く一直線に目的地に辿り着ける自信がある。

だから、飛行船で半日かかる道で、ハンター試験が午前中に受付を締め切ってしまう状態で、依頼人(故)の財産を没収するのに時間をかけたとしても――≪白日の詐欺師(ディアー・フィアー&ティアー)≫を解除してしっかりオーラを回して全速力で駆け通せば、ザバン市に時間前に着くことだってできる。

そこまでしないとできないということでもあるが。

「ザバン！ 市の！ いったい！ どこなの！ 急いで来たのに報われない！！」

ぜえはあと街中で息を整えながらAは叫んだ。≪白日の詐欺師(ディアー・ティアー&フィアー)≫は発動し直してある。
いやそんなに消耗するほどやわな身体はしていないのだが、気分の問題で。

試験会場がはっきりしてないなんて聞いてない。

Aは太陽を見上げて時間を測った。恐らく試験開始まであと十分もない。
どうしよう。こうなったら自棄だ。

「こんにちはー！ ハンター試験試験会場をご存知の方はいらっしゃいませんかー！ 誰かー！」

Aは恥もへったくれもなく大声を上げながら街を練り歩く。目を逸らす奴、不審そう、うるさそうに見てくる奴は除外。何か知ってそうな挙動をする人物がいれば儲けものだ。

「すみません、あなた」
「はい」

ビンゴか、詐欺か。

声をかけてきた男は奇妙な赤い目をしていた。

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