アンフリーフォール ページ21
三次試験会場だ、と言って連れてこられたのはやけに高さのある巨塔の屋上だった。
「さて、試験内容ですが、試験官からの伝言です。生きて下まで下りてくること。制限時間は七十二時間」
つまりこの塔は名前の通り――トリックタワーと言うそうだ――、あの手この手で受験生を殺そうとしてくるのだろう。何なんだ。アスレチックにしては過激すぎないか。
しかしAは、そんなことよりそれを伝える豆っぽい男がいったい何なのか気になって仕方がなかった。アレ、番号札を渡してきた男だ。
「それではスタート! 頑張ってくださいねー!」
Aら受験生は去っていく飛行船を見送る。
気分は孤島に取り残される漂流者。
人間心理に従い、ひとまず多くの受験生が屋上の際から下を覗き込んだ。Aも例に漏れない。
柵などどこにもない。円形の屋上の、その端から先は垂直に切り捨てられて、地面は霞んで見えない。窓が見当たらないのも相まって、塔というよりは積み木めいて見えた。
ふむ、とAは頷いた。これは降りられないだろう。普通の、
「普通の人間ならな」
「……うん?」
やや離れたところから聞こえた声にAはぱちくりと瞬いた。
今わたしの内心を代弁したのは誰だ。
目をやると壁面を這い下りていく男がひとり。
彼女はほてほてと近寄っていって男を見下ろした。
……普通の人間にしか見えない。身体能力も大したことはなく、腕も脚も二本ずつしかない。
うーん、と観察しているうちに、男は飛んできた怪鳥に頂かれてしまった。なるほど天然の防犯システムということらしい。
「外壁をつたうのは無理みてーだな……」
「よし、外から行こう」
「オメー今の見てたかァ!?」
「見てたよ?」
レオリオの素頓狂な声が可笑しい。Aはけらけらと笑いながら一歩を踏み出した。
「つまりもっと速く降りれば襲われないんでしょ?」
外からの攻略ができないように図られているということは、下に通じる隠し扉があるということだ。
Aはそれを通れない可能性が高い。
それに何より――彼女はちんたら時間をかけるのが嫌いだ。
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海野(プロフ) - sakuさん» そのとおりですね。指摘ありがとうございます、記述を訂正しました。 (2019年4月9日 8時) (レス) id: 542ac62a81 (このIDを非表示/違反報告)
saku(プロフ) - すみません。ページ12で『白日の詐欺師』にも隠は効くっていうの、そもそもの能力発動条件をクリア出来てないんじゃないでしょうか?纏以外使えないという条件でしたよね?間違ってたらすみません! (2019年4月7日 12時) (レス) id: 7af2b9ccfb (このIDを非表示/違反報告)
海野(プロフ) - sakuさん» コメントありがとうございます。心外ピエロの作者と個人的に交流があるのですが、sakuさんがどちらにもコメントをくださっていてびっくりだねという話をちょうどしておりました。いいですよね。続編も続けられるよう頑張ります! (2019年2月3日 8時) (レス) id: 2600401e00 (このIDを非表示/違反報告)
saku(プロフ) - 心外ピエロ私もよんでるんですが…いいですよね!あと、更新お疲れ様です。相変わらずとても面白かったです。 (2019年2月2日 22時) (レス) id: ee214ae639 (このIDを非表示/違反報告)
海野(プロフ) - 操菜 荘椏さん» コメントありがとうございます。これからも頑張ります。 (2019年2月2日 19時) (レス) id: 2600401e00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海野 | 作成日時:2019年1月16日 13時