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ぼんやりと舞台上を眺めていると、ふと、彼女と目が合った。ハッとした顔をした彼女は、ふわりと頬を緩ませて俺に小さく手を振る。
あぁ、可愛くて仕方がない。彼女の言う好きな人が俺であればいいのに。
流石にねぇわ。夢の見すぎか。自分で自分にツッコミを入れつつ、俺も手を振り返した。
Aとは、偶然講義で隣に座ったのを期に仲良くなった。大人しそうなその見た目とは違い、彼女はお喋りのようだった。その日友達が休みで喋り足りなかったというA。そして友達がサボりで1人だった俺。そんな訳でお互いたまたま1人だった俺たちは、講義中にコソコソとお喋りしていたわけである。
講義後に男共から猛攻撃を受けたのはAには黙っておこう。
学部が違うので同じ講義は少ないのだが、何だかんだ趣味のあった俺たち――俺の男友達とAの女友達も――は、昼飯を一緒に食べたり、休みに遊びに行く様な仲になったというわけだ。Aを好きになるのに、さして時間はかからなかった。
▷▶▷
観客の大歓声で意識を舞台上に戻すと、知らない先輩同士が初々しく手を繋いで微笑んでいた。はい、おめでとうおめでとう。ミス葉星なんて好きになっちゃった俺には希望なんて無いんですよ。心の中で悪態をつきながら、俺は拍手の代わりに片手のプリントを叩いた。
とある先輩から聞いた話によると、いつものパターンはこうだ。
壇上で男子が名前を叫び、群衆の中から驚いた顔をした女の子が出ていく。告白して、成立するか振られるかして、はい次の方です席にお戻りください。
それだというのに最早舞台袖で控えさせられているAを見つめ、俺は本日3度目のため息をついた。
もう何人目なのかわからないが、また1人、男がAの名前を呼んだ。記念受験ならぬ、記念告白のようになっている会場。玉砕していく男達はさして残念そうでもないし、Aも皆本気ではないと感じ取っているのか、段々申し訳なさが薄れてきているみたいだ。
マイクを持たされ舞台中央へ歩みを進めるAと、ヘラヘラした名前も知らない男。腹が立つがどうすることも出来ず、俺は渋々2人にスポットライトを当てた。
好きです。付き合ってください。
ごめんなさい。
3度目のそのやりとりと、観客の落胆したような声と笑い声。なんてつまらない。
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いりの。(プロフ) - 凄く素敵で好きなストーリーでした。今後の二人も気になるところです 笑 これからも応援しています。 (2020年6月23日 0時) (レス) id: 4a9fe01d6b (このIDを非表示/違反報告)
さくの(プロフ) - 白城あろさん» コメントありがとうございます!白城あろさんの作品いくつか読ませていただいてます…!いえいえ、そんな何度も読むような物では(汗)(汗) 今後もぜひよろしくお願いします! (2017年9月5日 14時) (レス) id: 916deec87a (このIDを非表示/違反報告)
白城あろ(プロフ) - コメント失礼します。本当にこの作品素敵で何回も読み返しています…!これからも応援させていただきます! (2017年9月5日 8時) (レス) id: 411fdf32c4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこしゅー。(プロフ) - さくのさん» 当たり前だ!!!さくのちゃんこそ伏見臣大好きbotに改名しよ?? (2017年9月3日 23時) (レス) id: a8d5a25739 (このIDを非表示/違反報告)
架月*(プロフ) - さくのさん» 読んで下さったんですか!?ありがとうございます光栄です… !花吐く蕾も拝見させて頂いていました! (2017年8月30日 12時) (レス) id: 6bbbbd55e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくの | 作者ホームページ:https://touch.pixiv.net/member.php?id=16336410
作成日時:2017年8月28日 18時