20 ページ20
.
「お母さん、綺麗な人なんだろうなー」
『ん？』
「あ、Aさんとお母さんって似てるのかなって」
帰りのタクシーを待つ間
岸くんに投げかけられた質問。
ちょっと飲み過ぎた
やっぱり隙だらけの私。
『んー、似てるとやだな。嫌いだし。』
「ハハッ、もお、嫌いとか言っちゃダメですよ？」
『だって、…………ほんとに嫌いなんだもん。』
「………Aさん？」
.
『ねえ、岸くんのお母さんてどんな人？よく泣く人？』
「え？…あ、いや、そんな印象は…」
『私のお母さんはね、そんな感じなの。……よく泣いてたな……私が何頑張ってもね、全然興味ないの』
「……そっか、」
『だからさ、嫌いなんだよねーすぐ泣く人。…見てるとさ、なんか………ね！…ふふっ』
.
私の幼い記憶の母はいつも悲しそうで
父の写真を眺めて、それを指でなぞっては
"早く迎えに来て。"
そう呟いては一人泣いていた。
母はとても厳しい人だった。
"あの家に相応しい人間になりなさい。
そうすればお父さんが必ず迎えにきてくれるから"
いつも私に呪文のように唱えていた。
期待に応えたくて必死だった。
母の笑った顔が見たかったから。
勉強も運動もいつもトップクラスの成績で
友達とも仲良くしたし、大人の言うこともきちんと聞いた。
本当に、出来た子どもだったと思う。
だけど、賢くなった私は気付いてしまう
迎えにきてくれる？
そんなはずない
私が生まれて何年経つの？
会ったこともなければ手紙の一つも寄越さない。
ただ毎月、決まったお金が振り込まれるだけ。
それは愛情なんかじゃない
私と母を隠すための口止め料。
……そっか。
私ってほんとは存在しちゃいけないんだ。
なんだ、頑張る必要なんてなかった
誰かのために…なんて、
なんてくだらないことしてたんだろう。
.
「……大変…だったんすね？」
『ん？』
「Aさん、辛い思いしてきたんすね？」
『え？そんなことないけど？』
「いや、でも、」
『まあ、あの頃は私もバカだったなーって可笑しくはなるけどね？…色んな人に縛られてさ………ほんと、バカみたい』
「……あのさ、」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 890人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ayuha(プロフ) - 涼杜兄妹さん» やった！また頭抱えてもらえた！笑、パート2の岸くん&主人公ちゃんにも興奮しちゃって下さい( ´ ▽ ` ) (2020年8月17日 7時) (
レス) id: 3d6cda5c80 (このIDを非表示/違反報告)
ayuha(プロフ) - みなこさん» ありがとうございます( ´ ▽ ` )お待たせしました！いい子な岸くん、大好きです( ´ ▽ ` )パート2でもいい子発揮してくれると思います♪ (2020年8月17日 7時) (レス) id: 3d6cda5c80 (このIDを非表示/違反報告)
涼杜兄妹(プロフ) - うわぁー、うわぁー！！興奮がすごいです！！今回も思わず頭を抱えました！（笑）はぁー、岸くん好きすぎます！ayuhaさんこ書く岸くんがドンピシャでだいすきです！続きも楽しみにしています♪ (2020年8月16日 1時) (レス) id: 400e48a6ce (このIDを非表示/違反報告)
みなこ(プロフ) - 更新お待ちしてました、急展開ですね！岸くんいい子…この後の主人公ちゃんの反応が楽しみです！ (2020年8月15日 15時) (レス) id: 4ba1728e1f (このIDを非表示/違反報告)
ayuha(プロフ) - しぃ。さん» はじめまして♪嬉しいお言葉ありがとうございます( ^ω^ )続きお待たせしました！！今日はたくさん寝て下さい♪笑 (2020年8月15日 15時) (レス) id: 3d6cda5c80 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ayuha
| 作成日時：2020年7月31日 19時
