金曜日の魔法使い

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楽屋に戻り、鏡の前に立って

きゅっと高い位置で髪を束ねてみる。




……指先だけでも。




腕を動かして、少しだけ練習。

したけど、すぐに辞めた。



ため息と同時に、束ねた髪を解く。


…冬の発表会は出れるかな。

…来年はコンクール、出れるのかな。




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今年のコンクールは諦めた。



どんどんと離れていくバレリーナの夢。

廉はあんなに頑張ってるのに…。



両立できないもどかしさで毎日が苦しくて、辛い。





"私、ほんとはどうしたいのかな。"





ため息の正体はきっとこれ。






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"髪下ろしてんの、いいと思う。"



そう、褒めてくれたいつかの廉。

バレエをしてない私でも、廉は応援してくれるのかもしれない。






"色々勉強してきてるんだなーってわかるよ"

"明日のお芝居もすげー楽しみだよ！"



さっきの平野さんの言葉。

素直に、嬉しかった。








…やっぱり、今は目の前のことだけ頑張ろう。




そうやって、明日も1日が過ぎていく。






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バレエか仕事か

夢か現実か





どっちも諦めたくなかったのに


悩んで迷って、わからなくなって。





悩むことをやめてしまうと、

少しずつ、少しずつ

現実に重みは傾いて


片方は軽く、高く、

遠くへ行ってしまう。



だけど、





仕方ない。

やっぱり現実には逆らえないんだから。
　




仕方ない。





そうやって、自分を納得させるようになったのは




私、この仕事、好きだな。


そう、気付いたから。









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