金曜日の魔法使い

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「Aちゃん、ですよね！？！？」



イヤホン越しでも聞こえる私の名前。

失礼かと、慌ててイヤホンを取る。



『…あ、はい、』

「やっぱり！！最寄り、ここなんですか！？」

「いつも雑誌見てます！めっちゃ可愛いー！」

「「応援してます！！」」


『あ、あ、ありがとうございます』


なんて、凄い勢いで手を握られて


「あ、電車や！行かな！」
「廉くん、またね！」


そう言うと、電車に乗って台風のように女の子達は去っていった。







『「………。」』







取り残された私と廉は顔を見合わせる



「フハハハハッ、お疲れ！、お前、いつの間にそんな有名なったん？すげぇやん！応援されてるやん！」


『……わかんない。とりあえず、びっくりしちゃった。…あははっ』


「フハッ、まあ、確かに。あいつらいつも勢いすごいからなぁ。」


『廉の友達なの？』


「あー、うん。まぁ。」




同じ学校の子かな？なんて思っていたら

少し照れ臭そうに、頭をかいて



「まあ、あれよ。俺のファン。なんやて」


『……は？』


「いや、は？て！」


『………。』


「知ってると思うけど、俺、結構イケメンやん？
　やからファンの子、おるみたいで。」


『……目、死んでるのに？』

「だから死んでないわ！」


『……ふふっ、へぇ〜。れん、凄いんだね！』




そう笑うと、廉は少し眉を下げて複雑そうな顔をした。

よく見ると、たくさん紙袋を持っている。





『…それどうしたの？』


「もらってん。バレンタイン。」


『！？！？！？』





そういえば、少し前にバレンタイン特集の撮影、した！




…今日なんだ。全然忘れてた。


…普通の女の子はちゃんと用意してるんだ。


…それに、廉、そんなにチョコ貰ったんだ。






「ハハッ、お前はほんまこういうの興味ないよな〜」


呆れたように笑う廉。





なんだろう。胸がチクッとする。





『……ごめん。』


「え？いや、そんな謝ることちゃうよ。」





急に、自分が女子失格な気がしてきた。




……あれ？私なんでこんな凹んでんの？

やっぱ疲れてるんだな。




『………。』


「…今日、金曜ちゃうけどさ、」


『？』


「公園、寄って行かへん？寒いけど。」


『…うんっ』






願ってもないお誘いに、返事をする声が弾むのが自分でもわかった。




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