My Fancy！-Extra time- 2

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FUMA side






"らしくないのはお前だろ。"





じわじわ攻めるはずだった。

岸のことなんて気にならないフリをして

いつも通りの俺で

今まで以上に大事にして。


お前に相応しいのは俺なんだよって

そう、思わせたかったのに。


見合い話を聞いても

マジでどうでも良さそうで。

あー俺はまじでそういう対象じゃねえんだなー。って

自業自得だけど…焦って。

苛立って。



“ お断りした方がいいよ。"



誘導だとしても、俺の求めていた答えに一喜して。

俺ってこんなに恋愛下手だっけ？

なんて、そんな自分を自嘲して。

それでも悪い気はしなくて。

だけど…





“らしくないね"





彼女の放ったその一言に

心の底にしまった思いが漏れてしまう。





「…え？」


『らしく無いのはAでしょ』


「どうして？」


『岸。』


「岸くん？」


『…………っ、………なんで…岸、……なんだよ。』


「………。」





デスクに肘をつき、口元で両手を組む。

じっとAを見つめている間

俺の心臓はマジでバクバクいってて

手だってちょっと震えかけてる。


だけど、Aの瞳には

揺らぎも困惑も一切見えなくて…


あーこいつは本当にいつでも冷静だよな。


なんて少し感心しつつ、

この間の“らしくない”彼女の表情を思い出して

俺はやっぱりその程度なのかと虚しくなる。


Aがキーボードから手を引いて

俺の目を見て、そっと口を開いたとき…




「Aさん、内線、経理からです。」


「あ、…ありがと」





俺を気にしつつ電話をとる彼女に目配せして

後ろを向き、静かに大きく息をした。





『はあーーー………。』





多分、初めて向き合った。

とても遠くて深いAの本心に。

触れようと初めて手を伸ばした。


数秒の出来事だったはずなのに

疲労感がとてつもない。


こんなに勇気のいることを

岸は何回やってのけた？

あいつ、どんだけタフなわけ？

やっぱおかしいだろ。





気がつけば、彼女はもう仕事モードに戻っていて

話を戻す気力もない。




……奪うってなに？どうやんの？

俺。岸に啖呵切っといてまじで何にも出来てねーし

出来る気も、……。

あーあ。

岸はすげえなぁ…





"そろそろ手ェ引いてもいんじゃない？"





あの常套句、まだ通用する？





手に入れたい。

だけど、Aは…





"らしくない"彼女に動揺したあの日から

胸の中は複雑にせめぎ合ってばかり。






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