My Fancy！-Extra time- 2

35 ページ35

.









この人はバレンタインになんて

興味ないんだろうなって思っていたから

チョコなんて期待していなかった。


まああったらそりゃあ嬉しいけど！

でも、"わかんない"って。

…ははっ、それは無いのね。


まあ別にいいんだよ。

なんにせよ、他のもの。

いっぱい貰うから。


Aはちゃんと優しいから

"バレンタイン、ちょうだい？"って言えば

絶対くれるって俺は知ってるんだもんね。



いっぱいキスしていっぱい味わって

トロンてなった甘い瞳のAに手を伸ばして

掠れそうな可愛い声で俺の名前をたくさん呼ばせて

それで、それで……



想像していたよりも早く訪れたその時間に

俺のテンションは最高潮で。





「……ぁっ……やだ、待って…、」


『ん？、ベッド行く？』


「違っ、…ひゃあっ……！、」


『違くないじゃん。…ほら、もうここ硬、』





ーーピンポーン


「『！』」





「は、……っ痛ッて、」


『もう！！バカ！！』





鳴り響いたその音に、意識が少し逸れた瞬間

俺はAに一発叩かれ、ついでに罵られ…あーあ。

お預けじゃん。





スッとした声色で応答を済ませた彼女は

あっという間に乱れた服を整えて玄関に向かい

何やら個包を抱えて戻ってくると

キッチンの床で溢れた炭酸水を拭いていた俺を

難しい顔してじーーっと見下ろしている。





『……おー何届いたの？』


「………。」


『…、A怒ってる？ごめ、』


「チョコ、貰ったんだよね？」


『ん？……あー、うん。何個か貰ったけど…』


「見せて？」


『は？』


「見せて！どんなの貰ったの？」


『…いいけど…あ、なに？一緒に食べたい？』


「は。んなわけ無いでしょ。」


『ですよね…ごめん、』





すごい不安そうな顔してるから、

空気和むかなってちょっと笑ってみせたけど

ちょー逆効果。


すっげー冷たい顔。

…間違えた。ははっ。


Aの意図が全然わかんねぇけど

納得するならまあいいやって

今日もらったものが入った紙袋を渡した。









.

36→←34

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す