My Fancy！-Extra time- 2

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YUTA side









寝不足にA不足。

どんどん心は曇っていくけれど

それでも朝はやってくるわけで…





『………っし、』




今日も頑張らなければと気合を入れて

セキュリティゲートに社員証をかざす。





「岸さんっ、おはようございます！」





聞こえたその軽やかな声の色に

何故か感じる懐かしさ。





…あ、昨日の子…か。





『おはようございます。』


「あの、昨日はありがとうございました！」


『え？』


「メロンパンと栄養ドリンク！おかげで残業頑張れちゃいました！」


『あー、それはよかったっす。お役に立てて』


「それで…あの、お礼と言うか…、お口に合うかわからないんですけど…よかったら食べてください！」





きらきらとした瞳で差し出されたのは小さな紙袋。





『え。……いやいや、お礼とかそんな、』


「私、お菓子作りが趣味で！それで…ついでというか…あっ！いえ！全然！ついでじゃないんですけど…えっと……っ、」


『…ふはっ』


「！？、」


『あ、…すみません、なんか…ちょっと前の自分を思い出して、』


「…え？」


『これ、残業終わってから作ったんすか？』


「えっと…はい。そう、です。」


『へえー！すごいっすね！！』


「そんな…っ。全然…です。」





にこりと彼女を見ると、照れたように

ふ、っと逸らされる視線。

少し赤くなった耳。





…あーあれだ。

この子、あの時の俺みたいで…





「あっ、もうこんな時間！私、朝イチ会議で…すみません！では失礼します！」


『え、あ…が、頑張って下さい！』





紙袋を俺に押しつけて、エレベーターを待たずに

エスカレーターを駆け上がっていく彼女。

その後ろ姿にとりあえず声援を送った。





朝から人に感謝されて

お礼の品までもらっちゃって…

心が晴れたっていいはずなのに

全然、曇ったまんまじゃん。





『…………はぁ。』





彼女の軽やかな声も

慌てるような仕草も

わかりやすく逸らされる視線も

少し前の俺と同じ。


あの頃は、Aと目が合うだけでテンパって

とにかくなんでも嬉しくて。


不安とか、焦りとか…

そんなものに駆られる俺じゃなかったのに。





まぁそもそも？

Aは高嶺の花で

俺なんか相手にされないって

俺なんか……………、っ。





……あ。

そうだ。

そうじゃんか！！


ははっ！

俺……今更なに気にしてんだよ。





分厚い雲にそっと光が差すような感覚。









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