sweet sweet sweet 8

Sweet consonance＜11＞ ページ11

♡side


「本当によかったの？」

「うん」



アスファルトむき出しの壁に囲まれた廊下を
コウキと歩く。
先に東京へ帰って……、タカのこと待とう。
ライブを一緒に頑張ってきたみんなとの
かけがえの無い時間。
ツアーの最終日は特にそう。
おれが邪魔していいはずない。



「ゆうや！」

「たか………？」



後ろから大きな声で呼び止められる。
一目散に駆け寄ってきて
おれをぎゅーっと抱きしめたのは
まだ着替えも済ませていないタカだった。



「どこ行くの」

「……めちゃめちゃカッコよかった」

「どこ行くつもりだったのって聞いてるの」

「……ごめん」

「俺も一緒に帰るから。待ってて」

「タカはダメだよ」

「いいから待ってて。コウキも」




タカの有無を言わさない雰囲気に圧倒されて
おれとコウキは控室へ戻った。
しばらくすると、私服に着替えたタカがやってきた。



「お待たせ」

「うん……」

「どした？」

「すげー、感動した……」

「ふふ。当然でしょ」

「もう！」



あんなに不安そうにしてたのに
いつものタカに戻ってる。
でも……、おれはこっちのタカのが好き。
弱気になってるのもかわいいけどさ。



「ゆうや？」

「なーに」

「ありがとう」

「タカ……」

「来てくれてありがと……」



タカは泣きながら笑ってる。
こういうとき、おれは泣かないって決めてる。
なのに涙が止まらない。
2人して泣き笑いしてたら
後ろから軽く咳払いが聞こえてきた。



「あのー……、すみません」



ハタと我に帰る。
あ、そうだ。
コウキいるんだった……。



「新幹線の時間があるので、行きますね」

「コウキ？」

「ここの部屋、取ってありますので」

「へ…」

「こう言うこともあるかと思って手配しておきました。じゃ、僕はこれで」



そう言うと、コウキはタカにペコリと一礼して
控室を出て行った。



「敏腕マネージャー、だな」

「………でしょ」



ふふっと笑ったタカの顔が近づいてきて
あっという間に唇が重なる。
頭が痺れたようにボーッとするけど……



「タ、カ………、だめ」

「どして？」

「だって、ここ……」

「………そか。帰ろっか」

「ぅん…」



タカは目を細めて
おれの手をぎゅっと握った。




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