恋じゃなくなる日

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♡side


隣からはスヤスヤと寝息が聞こえる。
ごめん、おれ出て行くね。
寝室をそっと出てリビングに行くと
眠っていたエマがふっとおれを見る。



「えま……。パパといこっか」



ここを出て、どこに行こう。
頼る人もいない。
実家やあの家には戻れない。
エマを連れて行くならホテルにも泊まれない、か。



「あ、……あはは…。そ、か……」



考えを巡らせているうちに
あることに気付いて自嘲する。
おれ、お金もスマホもない。
出て行こうとしても出ていけないんだ。
悔しくて悲しくて、リビングの床に蹲る。
どこへも行けないなら、どうすればいいの……？
そうだ。
タカが危ないからってしまった包丁。
確か、あそこにしまったはず。
……ない、、、？
別のどこかに隠したみたい。
どこ？
どこなんだろう。
思いつくところを探すけど、見つからない。
なんで？
なんでないんだよ。



「……なにしてんの。みつかった？」



背後から声がして身体がビクッと跳ねる。
振り返ると腕組みしたタカが立っていた。
下を向いたまま、首を横に振る。
全部お見通しなんだね。
ふぅっと大きくため息をついて
タカが近づいてくる。
今度こそ、呆れた……？
おれ、また死のうとしたんだ。
呆れちゃうよね……。
涙を堪えていると、タカがふわっとおれの身体を
包み込んだ。









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