Who am I ？ 6 (ページ12)

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(2019年)

日本のツアーを前に、事務所から持ちかけられた話。日本のアーティストの曲をカバーして歌い、Y*uTubeの公式チャンネルにアップしないかと。挙げられたアーティストさん達のリストを見れば、ボーカルで魅せる曲を歌っている人がほとんどだった。

わたしは元々練習生時代、ボーカル強化生だったけど苦手なことを克服したくてラップ強化生になった。今でもグループの曲ではボーカルよりラップを担当することがほとんどだし、ボーカルの練習をしているとは言え、ひとりで歌うのは少し自信がなかった。

『一回持ち帰ってリストの中から考えます』

そう言えば、スタッフさんもOKをだしてくれるから、リストを宿舎は持ち帰った。「おかえり」とリビングのベッドに寝転び、スマホゲームをしながら手を挙げるのはウォヌ。ルームメイトだったけど、いつからかウォヌはリビングで寝るようになっていて、リビングにあるベッドはもはやウォヌだけのものでなく、みんなのものになっている。

WN「ご飯食べた？」
『まだ』
WN「一緒に食べない？」
『うーん、どうしようかな』
WN「食べないの？」
『お腹空いてなくて』
WN「悩み事？」
『悩みってほどのことはないんだけど…』

さっき事務所で伝えられたカバーの話に付いてウォヌへ話すと「やってみればいいと思う」と簡単に一言が返ってくる。

『やってみたら…いいのか』
WN「うん。だって俺らのキーだから。心配することなんてなにも無いでしょ？」

あたかもそれが普通のことかのようにそう言うから。こっちが照れてしまう。

WN「よし。ご飯食べよう」

そう言いながら冷蔵庫に向かってコーラをわたしに渡す。

『オッパ。わたしコーラ飲めない』
WN「あ、そうだった。じゃあ、こっちにしようか？」
『オッパ…、ありがとう』
WN「ん？何が？お腹空いたから、ほら。早くご飯食べよう」

ビールを片手にこちらを覗くウォヌに頷いてみせながら、色んな意味を込めてお礼を伝えれば、何もなかったかのようにウォヌは微笑んでみせた。