第四十一話 ページ7
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夜中、スマホが震える音で目が覚めた。こんな時間に、メンバーだろうか。たまに夜中にキデキデ配信をして、こっちが寝ているのもお構いなしに電話をかけてくることもあるから。寝ぼけ眼だったのに、一気に目も頭も覚めてしまった。
やけに冷静なのは、もうこれが何回も続いていたからだろうか。
【非通知設定】
スマホの画面に並んだその文字。夜中の3時過ぎ。出るべきか否か。唇を噛んだ。震える手で緑色の通話ボタンを押そうとすると同時にソレは切れてしまった。
シューリンが送ってくれた中国で見つけて写真を送ってくれた珍しくオレンジの薔薇の写真。花言葉は“友情“、“美しき青春の思い出“だと教えてくれて、わたし達にピッタリだねなんて言いながらロック画面にしたこの写真。
通話画面から切り替わったそのロック画面にポタポタと滴が落ちて、小さな水溜りを作る。最悪だ。こんなことで泣きたくもないのに。
『ハァ、』
深く落ちるため息。涙を誰も居ないのに誰かから隠すように拭いた。今日こそジョンハンが居なくて良かった。でも、そんな時だからジョンハンに会いたい気持ちも大きかった。
それにこのことはジョンハンどころかメンバーの誰も知らないから今更言うわけにもいかないし。とりあえずイムさんには言おうか。でもまだこれが初めての電話だし。
そんなことを色々と考えていたら、眠れなくなってしまった。物音は立たないようにして部屋に置いているドレッサーの前に座る。
『酷い顔…』
これがアイドルだなんて、そう思ったら思わず鼻で笑ってしまった。
この電話がいつものサセンからのものなのかどうかはわからなかったけど、平気なフリをしてみたってわたしはまだ怖くて仕方ないらしい。また鏡の中の自分を見つめながら大きくため息を吐いた。
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作者名:柚紀 | 作成日時:2023年11月14日 22時