my princesses２ (ページ45)

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(SC side)

Aは言わなかったけれど、それが最初に練習生になった時のことであることは言わなくても分かっていた。当時もデビュー候補生の中でも年上で、さまざまな理不尽なことにも耐えなければならないし、精神的にそうなるのは俺もそうだったからなんとなく分かる気がした。

『でも、みんなのおかげかな』

グイッと酒を流し込んで、微笑む。

『8ヶ月くらい休ませてもらって…、みんな何も言わずに待っていてくれたし、励ましてもくれて大丈夫だよって安心できる材料がわたしにはあって、それにスンチョリが大邱まで会いに来てくれたじゃん』
SC「ああ、地元でご飯食べた日」
『それがあったからわたしは余計にここに戻ってきたいって思ったから。スンチョリにはすごく救われたよ』

泣きそうになるのを誤魔化して、今度は俺が一気に酒を流し込む。

『わたしさ、YGに居た時の1年って…。凄く凄く毎日が長くて、レッスンも楽しいけど、なんか…こう、口では言い表せれないけど物足りなさみたいなのがあってさ。初めての練習生生活で、大邱から出てきて、家族にも会えない。連絡も取れない。毎日しんどいだけで、最後には身長が足りないからデビューは無理って言われちゃってさ』

思えば練習生の時からかれこれ長い付き合いなのにAの口からこういった話を聞いたのは初めてだったように思う。でも俺はなんと返せばいいのかわからなくて、ただ口を閉じ頷くことしかできない。

『もう練習生は良いかなって思ってた時にJYPにスカウトされて、PLEDISにも誘われて。本当にたまたまなんだけど、小学生の時に同級生だったソン・ミンジ、覚えてる？』
SC「うーん、なんとなく…？」
『ミンジがPLEDISにはスンチョリがいるって教えてくれたんだよね。正直あの時、スンチョリの存在は微塵も知らなかったんだけど』

Aは冗談を言うかのように笑いながらそう言った。

『でもそれがわたしの好転だったんだよね。スンチョリにも出会えて、ユンにも、ジスにも。…可愛い弟、妹達ができて家族が増えた！なんかさ、…多分YGの時はみんながライバルって感じで友達、家族って感じじゃなかったからそう思ってたんだと思う。だからみんなに会えて良かったって思ってるよ』

それは俺も同感だ。そう感じていた。そんな話を聞きながら気がつけば頬に暖かいものが伝っている感触がして。隠すように必死に拭った。