第五十六話 ページ31
*
(WZ side)
練習前に会議室に集められた俺ら。扉を開ければAヌナがいた。嫌なお知らせだと思った。このチームからこの人が居なくなるかもしれない。そう思って。
身体の奥から震える。俺はこの人の歌声を、ボーカルチームからこの人を、失ってしまうのではないかとそう思うと身体が震えて自然に涙が出てくる。
でもヌナが口を開いたのは違う話だった。
『わたしは、これからも…、SEVENTEENで居たい』
当たり前だろ、何言ってんだよ。ヌナ。戻ってきてよ。そう思うのに言葉は出てこなくて、出てくるのは涙だけだ。
『わたし、戻ってくるね』
そう言っているヌナはいつも見ている姿より更に綺麗に見えた。
泣きながら95ズのヒョン達が抱きつき、おかえりと言葉を交わして、その後俺とホシに向けて手を広げた。いつもなら恥ずかしくて断るそれも今回ばかりはホシよりも先に身体が動いて、ヌナの腕に抱かれて泣いた。
ああ、良かった。俺はこの人の歌声を、この人を、このチームから失うことが無いんだ。
みんなでひとしきり泣いた後、ヌナが帰ってくるのはソウルでのコンサートが終わって、次のカムバのショーケースの日だと言われた。いつもなら噛みついていたホシも、今回は噛み付くことなく「ヌナが帰ってきてくれるならなんだって良い」と笑っていた。
みんなが練習室に向かう中、Aヌナは俺だけを呼び止める。
『ジフナ、ちょっと伝えたいことがあるんだけど』
WZ「今?」
『うん。大事なことは先に伝えてってみんなに言われたから』
WZ「いや、うん。まぁ、大事なことだろうけど」
『…そろそろ言おうかな〜と思って』
WZ「何を?」
『Lightがわたしだって…、CARAT達に言おうと思ってる。まぁ、まだ少し先になりそうだけど』
WZ「え!?」
まさかだった。あれだけ頑なに隠していたのに。
『言わなくても良いかな、って思ってたの。…でも、わたしはCARAT達にも、みんなにも、もう何ひとつも隠し事をしたく無い』
WZ「………ヌナがいいと思うなら、良いよ。それに俺はずっと言ってきたら?って言ってた側だし」
『うん。もしそれで、ざわついて売上落ちたらごめんね』
WZ「何言ってんだよ。絶対無いから」
『わ、言い切るの凄くない!?』
WZ「俺が認めてるヌナだから。そんなことあるわけない」
俺がそう言うとヌナはやけに満足そうに、そして嬉しそうに『ありがと、ジフナ』と微笑んだ。
851人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:柚紀 | 作成日時:2023年11月14日 22時