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(SC side)
Aが体調を崩し、そして最近も体調がよく見えなかった原因が明らかになって、気付いてあげられなかった自分を責める。でも俺以上に自分を責めていたのは、俺よりも遥かに近くで見ていたジョンハンだろう。
電話が掛かってきていたと言っていたから、どれほどの物か確認するためにスマホを借りて見るとスクロールが止まらない。そりゃこれだと体調だって崩して当たり前だろう。
深くため息を吐いた俺を見てAは『これは…でも、最近だけで。本当につい最近までは無かったから』と慌てて言うけど、そういうことじゃない。
SC「しんどかったよな。ごめんな」
俺たちもアイドルを数年やってきて、こういう事に困ったことは何度もあった。それにAに関しては俺らと違う。女の子だから。
その言葉を聞いて、さっきまで明るく振る舞っていた表情が曇って唇を噛んだ。ギュッと目を瞑って、下を向く。次第に机の上には涙の粒が落ちる。
隣に座っていたジョンハンは慰めるように肩を抱いて摩って。そして隠していただろう右手を手に取った。
JH「痛かったね。守ってあげられなくて、…ごめん」
ぐるぐると包帯に巻かれたその右手に顔を近づけて、ジョンハンも泣いていた。そんな様子を見て他のメンバーも泣いていて、俺も泣きそうになった。
Aは首を横に振る。
『みんなが優しくしてくれるから、もう痛くない』
そう冗談を言うように笑ってみせて。
Aが泣いているところを見るのは2回目だ。あの活動休止を発表する前の練習室で泣いていた時。それと今日。
思えば、どんなにメンバーと喧嘩しても、他の練習生達に色んなことを言われても、先生に怒られても、よく泣いているのはシューリンばかりで。それを慰めるのがAだったと思う。
もちろん他のメンバーが泣いている時だってそうだ。
そんなAが泣いているんだから、よっぽど辛かったであろうことは一目で分かる。
『みんな、ありがとう』
HS「ヌナ…、俺…」
『スニョア、そんなに泣いたら明日の撮影浮腫んじゃうよ』
HS「知らなくて…!簡単に帰ってきて、なんて言って…ごめん…」
『ううん。ヌナが言ってなかったから』
ゆっくりと撫でられたホシの頭。我慢ができなかったらしいホシはまた号泣しながらAに勢いよく抱きついた。
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作者名:柚紀 | 作成日時:2023年11月14日 22時