第三十六話 ページ1
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(JH side)
初めて入ったAとシューリンの宿舎。僕たちの宿舎もわりかし昔と比べれば綺麗に使っているけれど、比べ物にならないぐらい綺麗だ。女の子達の宿舎という感じがする。
シューリンとばかり遊んでいることに嫉妬して、無理やりAの1日を奪ったわけだけど、文句も言わず僕のわがままを受け入れてくれたあたり、やっぱりAは優しい。ただ断った後面倒になるのが嫌なだけかもしれないけど。
Aがメイクをしている間、ふと昔のことを思い出していた。まだ練習生になったばかりで、メンバーのこともよく知らなかったあの頃。
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『ユン』
JH「なに?」
『スンチョリとジスとご飯行くから、一緒に行こうよ』
思えば初めて会った時から一目惚れだった僕は、Aのことが気になっていたのになかなか仲良く出来なかったのは、幼馴染であるスンチョルと仲が良かったことに嫉妬していたからだろう。
この頃から僕はずっと仲間でもあり、友達のような、家族みたいなメンバーにすら嫉妬しているなんて、全然成長していないな。
JH「Aとさ…」
『うん』
JH「2人でもご飯に行きたい」
初めて言ったワガママだった。Aは目をまん丸くさせて、フッと笑う。
『そんなこと?』
JH「そんなこと…って」
『いつでも行くよ。ユンが誘ってくれるなら』
微笑んだAはとても可愛らしくて、目を奪われる。
『今度一緒に2人でご飯に行こう。だから今日は4人でご飯、良い?』
ひとつ頷いた僕を見て、今度は満足そうに微笑んだ。
*
『お待たせ』
昔のことを思い出していればいつの間にか30分も過ぎていたようだ。
ピアスを付けながらAが部屋から出て来る。ステージメイクをしているAや、ステージほどは濃くなくともメイクを普段でもしている姿を見ているのに、いつもより可愛く見えるのは何故だろう。
ノースリーブのサマーニットに黒の台形スカートを、合わせていてシンプルな格好なのにとてもなく似合う。僕とデートをするからとこれを選んでくれたのかと思えば、なんだか嬉しかった。
JH「可愛い。凄く」
冗談でもなんでもなく、そう言った僕に『何言ってんの』と少し呆れたように笑いながらそう言った。
JH「本当だよ」
立っていたAの元に寄れば、びっくりしたようにそこに居て後ろは扉だから逃げられるわけもなく。小鳥のように小さな口付けを落とした。
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作者名:柚紀 | 作成日時:2023年11月14日 22時