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(2022年)
(DK side)
これはどういう状況なのか。年の瀬にある授賞式。いつも様々な授賞式にグループ全員で呼んでいただいて、本当に有難い。そして、今年も。授賞式に呼ばれていてリハーサルを行うため、自分たちの番まで楽屋で待っていた。
「もう間も無く呼ばれるそうなので、準備お願いします」
DK「トイレ行ってきていいですか?」
『あ、わたしも!歯磨きしたい!』
「他に行く方居ますか?居ないならおふたりで行ってきてください」
マネージャーから「真っ直ぐ帰ってくるんですよ!」とそう言われて、キーとふたりで笑いながらお手洗いへ向かう。その道の途中でも何人かのアーティストの人たちとすれ違って、軽く挨拶を交わす。
DK「じゃあ、僕終わったら待ってるから。ゆっくりでいいからね」
『うん!ありがと!じゃあ、後でね』
キーと分かれたあと、キーが出てくるまで待っていると「ドギョムさん、」と小さな声がして振り返れば、新人アーティストの女の子。名前、なんて言ったっけ。忘れてしまって申し訳ないけど、なんだったかな。
「あの…!連絡先、交換して欲しいんです」
DK「あ……、ごめんなさい。基本的に連絡先を交換するのは男の人だけ、って決めてて」
「そう、ですよね……」
シュンと小さくなったその子は、口をギュッと噛んでいたかと思えば「わたし…!」と顔を上げて声をあげる。
「ドギョムさんのことがずっと好きだったんです!小さい頃から。もちろんそれが理由でアイドルになったわけではないけど…、ドギョムさんに会いたくて、頑張ってきました!」
そして、冒頭の状況に戻る。どういう状況なんだろうか、これは一体。
DK「あり、がとう…?」
「KEYさんがいるのは分かってるんです。…でも、好きでいても、いいですか?」
真っ直ぐにそう言われ、また真っ直ぐに見つめられて、目を逸らすことも返事を返すことも上手くできない。
『……好きな気持ちは自由だよ。その想いは大切にしなきゃ』
ハッと我に帰ったのは、僕の肩をポンと叩いていつも以上に優しい笑顔で微笑むキーのそれがあったから。キーがまさかいると思っていなかったのだろう。それにキーはいつから聞いていたのだろうか。その子は少し気まずそうな表情を浮かべて、またぎゅっと口を閉じていた。
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作者名:柚紀 | 作成日時:2022年12月26日 11時