Who am I ? (ページ8)

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(2011年)

目が眩みそうになるほどのスポットライト。目を閉じると耳に直接届くたくさんの声。ああ、わたしはこの日の為に、この声を聞く為に、このステージに立っているのではないか。

また目を開けると、たくさんの笑顔が目に入る。笑顔と幸せが溢れたこの空間が好きだ。色んなことがあった。嬉しいことも楽しいことも悲しいこともしんどいことも。でもそれも全てこの瞬間のために頑張ってきたと言っても過言ではない気がする。

いつの日か言っていた、「ステージの上で死にたい」というホシの言葉。その気持ち、凄く分かる。わたしも強くそう思うから。

*

『お兄ちゃん、どこ行くん？』
「今日から何月やと思う？」
『2月』
「うん、せやんな」
『2月やで』
「うん、おんなじことの繰り返しやな」
『ほんで？』
「2月のイベント言うてみ」
『バレンタインデー』
「マセガキ」

お兄ちゃんと2人。歩き慣れた道を歩いていると、2月になると、1月以上に街中はハートやらチョコやらで溢れかえっていて、心なしかカップルの姿も多い。そんな雰囲気に飲まれて、バレンタインデーだと伝えてみたら、なんなん？

3つ歳上のお兄ちゃんは今年高校を卒業する。高校3年生になって、早々に大学の指定校推薦を貰ったお兄ちゃんがアルバイトを始めていたのは知っていた。『彼女に逆チョコでも送るん？』と聞けば、「彼女おらんの知ってるやろ。傷えぐらんといて」と困ったように苦笑いを浮かべた。

「14歳でもう自分の誕生日も忘れたん？」
『あ、ほんまや』
「ガチやったんや…」
『忘れてた。だってみんな学校でもバレンタインデーの話しかせえへんもん。○○くんにあげるねん！みたいな』
「え、Aも渡すんちゃうよな！？」
『A好きな子おらへんもん』
「せやんな」
『で、Aの誕生日と何が関係あるん？』
「お兄ちゃんは高校3年生になってからアルバイトをしています。そしてAの誕生日です。つまり？」
『え？え！！？そういうことなん！？え？お兄ちゃん！大好き！』
「あー、こうやって世間の男達は騙されるんやろうな…。ごめんやけど高いのは無理やからな」
『えー！全然良いよ！ありがとう！』

お兄ちゃんが誕生日プレゼントを買ってくれるらしい。嬉しい。でもいいんかな。まぁ、いっか！

何を買ってもらおうかと気分も上がっていると、「すみません」と後ろから声がかかった。