ねぇ、逃げないでよ

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入り口とは反対方向から名前を呼ばれた。


声のする方を向くと、常連さん越しに目が合った。



「え、あ、スニョン？」

「……スニョ……スニョン？ え？」

「あんた人の彼女に何して……え、先輩？」

「……スニョン？ 何してんの？」

「やっぱり先輩じゃん、先輩こそ何してんの？」

「中で会わなかった？ いつものメンバーで開店祝いにご飯食べに来たんだけど」

「いや？ 会ってないけど、みんな中に居んの？」

「うん。 ついさっき中行ったから会ってるかと思ったけど」

「後で顔出すから先輩達帰る時教えて」

「ん、分かった」



……どういう事？



「ところでスニョン、さっき "A" って呼んでなかった？ "俺の彼女に" とか……彼女？」

「あぁ、姉ちゃんに変な男が言い寄ってるのかと思って」

「……"姉ちゃん" ？ 姉ちゃん……って事は、Aさんの弟ってスニョン？！」

「……弟です」

「んー、姉ちゃん、先輩と知り合いなの？」

「あー、その……」

「ん？ ……まさか、先輩がパン屋の常連客？！ 嘘でしょ姉ちゃん？」

「いや、その……」

「おん？ ……って事は、先輩が言ってた家に連れ込んで後悔した子って姉ちゃん？！」

「バカ、スニョン何言って」



"家に連れ込んで後悔した子" ……？







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「……どうしてこうなるの？」



何故か常連さんも加えた三人で机を囲んでる。



「俺が事情聴取する為。 ……つまり姉ちゃんが言ってたパン屋の常連客でジェソク(あいつ)に似てるって言ってたのが、先輩」

「……まぁそうだけど、そんなみなまで言わなくても……」

「で、先輩が言ってた色々あって家に連れ込んだけど後から後悔してる子が、姉ちゃん……」

「だっ、スニョンお前っ」



……後悔って、なんの事だろ。


スニョンが口に出す度に少し慌てた様に口止めしようとしてるし。



「……とりあえず乾杯しよ、酒飲まないと俺頭ごっちゃごちゃだ」



一人で乾杯して一人で飲み始めるスニョン。





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「ンへへ先輩〜。 先輩が好きなのは姉ちゃんだったんだぁ」

「だからそれは……」



案の定酔っ払ったスニョンは、常連さんにずっと絡んでる。



「スニョンいい加減にしないと、常連さんも困ってるよ」

「ん〜……姉ちゃん！」

「はい！ ……はい？ 何？ 急に大声やめなさいよ」

「姉ちゃんだって先輩が好きなんでしょー。 胸が高鳴ってチクチクするって言ってたのに」

「え……」





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