１ 横山side ページ1
事の発端は１本の電話からだった。
ヒルナンデスの収録前の楽屋での話。
電話のバイブ音と同時に表示されるスマホ画面の"ヒナ"の二文字。すかさず電話に出るとヒナは息を切らして震える声でこう言った。
「 すばるが倒れたって...今みんな病院向かってんけど...
ヨコは生放送頑張ってな... 」
返事をする間もなく電話を切られた。頭が真っ白になった。ヒナの言った言葉が脳内で駆け巡った。仕事を取るかメンバーを取るか考えることも無く俺は大勢の人に頭を下げ、仕事を後にした。
貧血か？風邪か？怪我か？...病気？
病院に運ばれたのだから、すばるの身に何も無い訳がない。俺は少しでも、少しでもすばるの健康を祈った。病室に向かってひたすら走った。
「 ちょっと転んだ 」
頭に包帯を巻いて病衣を着たすばるが笑顔で照れくさそうにこう言った。腕に巻かれた点滴が痛々しかった。すばるの声を聞いた瞬間ヒナも、マルも、安もどっくんも大倉も安心したように表情を緩ませて笑った。俺も少しだけ肩の荷がおりた。
「 大丈夫やから。来週には退院するし、ドラマもやるしライブも頑張るから。... でもごめん。今週いっぱい俺の仕事の代わり頼んます... 」
ヒナ「仕事なんか気にせんでええ。俺らがどうにかするから、すばるは血液検査受けて、ゆっくりし。もう無理しなや 」
すばるは「ありがとう」なんて言いながら俺らに頭を下げてふんわりと笑った。すばるが頭を下げるのは滑稽なものだった。すばるの笑顔は何処と無く切なくて、俺らとの見えない薄い壁があった気がしたが当時の初(うぶ)な俺はそんなこと気にしなかった。すばるの笑顔が見れればそれでいい。そんな単純な考えだった。
この頃の俺らは、すばるの本当の気持ちに誰も気づいてやれなかった。
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作者名：ねぎやま。 | 作成日時：2017年10月22日 19時
